じゃがいもの ポタージュ吹きつ うぶの顔
ひじきさん主催の、「じゃがいも俳句を作ろう」の会に参加してまいりました。
じゃがいもの品種と、5・7の言葉が書かれた3種類のカードを出し合い、俳句を作るというワークショップ。
じゃがいも俳句。かなり前のことだが、その原型となったであろう遊びを、ひじきさんとそのご友人が招文堂に持ってきてくれたことがある。あのじゃがいも俳句が、満を持してワークショップに!
しかも開催場所は、高円寺・読夢の湯という本屋さん。ひじきさんの日記「銭湯に通うように」にも登場していた、畳敷きの店内に靴を脱いで上がるという、あの面白そうなお店だ。形は違えど本屋を主催している身としては、面白そうな本屋さんなんて気にならずにはいられない。お誘い頂くや否や「参加したいです」と手を挙げていた。
会のスタートは、夜20時。30分ほど前から店の中には入れると聞き、遠慮を忘れて19:30を少し回ったあたりで店の戸口から中を覗き込んだ。
まず目につくのは、まだ青々とした美しい畳。突き当りの壁、天井近くに掲げられた大きな液晶画面。その右隣には首を振りながら我々を見下ろす、羽のあおい扇風機。
その真ん中で私を出迎えてくれたひじきさんは、なるほど、この店によく馴染んでいた。この、建て付けはちょっとマニアックなんだけど間口が広くてほっとするかんじ、ひじきさんとこのお店は、どこか似ているような気がする。
入って左手、少しだけ振り返ったところに番台めいたカウンターがあり、そこにいらした店主さんにご挨拶。こういう会に参加する折、いつも忘れてしまう名刺を、今日はちゃんと持ってきたのだ。
畳に腰を下ろし、ゆるゆると会話をしているうちにメンバーが集まってくる。ここにいる人みな、ひじきさんのご友人なのだから面白い。ざぶとんを譲り合い、めいめい名札を書き、ボールペンを回して……そんなこんなで、会が始まる頃にはなんとなく緊張も解けていた。
思い返せば、こんなにも早く緊張が解けたのは、畳敷きの部屋でひとつの卓を囲むという状況によるものが大きいのかもしれない。見知らぬ人の前で靴を脱いだ心もとなさを携え、ぺたぺたと歩く……どこかとぼけたこの空間で、よそ行きの顔をし続けられる人はそう多くはないのかも。
じゃがいも俳句の細かいところは、今後、実際にワークショップに参加する方々のためにも割愛するとして――
私が一番面白いなと感じたのは、すでに用意された5・7の手札に加え、参加者が自由に言葉を書き込めるブランクカードの存在だ。隣にいる人は、お向かいに座る人は、まったく違う畑で生きているらしいあの人は、いったいどんな言葉を選んでここに書くのだろう。自然と、この場に集まった人たちに興味がわく。
会はなごやかに進んでゆき、ひじきさんが用意してくれていた「ふるまいじゃがいもポタージュ」を手分けしてかき混ぜ舌鼓を打つ頃には、みんなすっかり初対面の顔ではなくなっていた。初対面ではなくなったところで、初めて見えてくるものがある。やっとその人の、その人らしいところに少し近づけるというか、垣間見せてもらえるようになるというか。このタイミングでしか楽しめない、くすぐったいコミュニケーションがぽつぽつと交わされていて、どこか面映ゆい心地よさがあった。ちょっと信じられないくらい美味しいじゃがいもポタージュで身体もぽかぽかだ。
会が終わる頃には、カードなくともちょっとした俳句を作りたくなるくらい、じゃがいもが、そして俳句が身近なものに感じられるようになっていた。
そういえば以前、どこかの日記で、「俳句を作ってみたいけど上手くできなかった」と書いたような気がする。
あの頃の私に教えてあげたい。俳句、作れるようになってますよ。
行きたかった…!!
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