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11月, 2023の投稿を表示しています

風通し

自炊する生活が少しずつ戻ってきた。 先日作った鶏団子鍋、団子のなかに生姜とれんこんをたっぷり入れたので、ざくざくして香りが良くておいしかった。外食もいいが、自分の好みにできるから可能な限り自炊はしたい。 調理に手が回るようになったのは、忙しさが若干落ち着いたのも、ちゃんと材料を買い揃える元気が出たのもある。しかし、一番の要因は「台所がすっきりしたこと」だろう。 ガスの点検が来るというので、せめてここだけはと玄関と台所を片付けたのだ。人を招くことのない典型的な一人暮らし、とりあえずが積み上がって動線が圧迫されており、ひどく使いづらい空間になっていた。ということが、片付けてみてわかった。 積み上げたものの塊をよけながらの日常動作は細かなストレスも積み上げていく。もはや億劫の大量生産である。なるほどなあ。 肝心のガスの点検は、点検箇所が外だったのでガス会社の人が家の中に入ることはなかった。これ、私の立会い必要だったんだろうか。まあ、いいけども。点検してくれた方がなにかと「すいません」と言うのでなんだかいたたまれなかった。普段点検に回ってるといろいろ文句言われるんだろうな。本当にご苦労さまです。 家の片付けをするときは、全部やろうとしないで場所を絞ったほうがよいという教えをちょこちょこ目にする。その通りだった。ここと決めるとおのずとやるべきことがはっきりするし、何より無理がない。あと、私のように全体的に荒れているタイプはお手本スペースを作って達成感を得て、その範囲を少しずつ広げていくのが正解なんだろう。 あと、昨年末大掃除を兼ねてはりきって模様替えしてぎっくり腰をやった(同時に新型コロナウイルスに罹患して大変ひどい目にあった)ので、もうあんな思いはしたくない。無理は禁物、もう若くない。ただでさえ我が家には本が多い。本は重いのだ。いっぺんに動かそうとすればそりゃ身体を壊すだろう。 大掃除とか言ってないで普段から綺麗にしておけ、と言われそうだが、それはそう。わかっちゃいるんですよ。片付けてすいすい動きたい気持ちはあるので、時間のあるときに「ここ」を決めてだんだん風通しのいいすまいにしていきたい。 という気持ちはね、あるのよ。

重鎮の貫禄

井の頭自然文化園のそばで、たぬきを見かけた。 通り沿いの茂みからくりっとした目でこちらを見つめてくるその生き物を、最初は野良猫だと思った。このあたりは野良猫が少ないので、珍しいものだと思いながら通り過ぎようとしたところ、どうにも猫ではない。なんだか顔が横に長く、ふさっとしている。ちらりと見えるしっぽもなんだか……もふもふ……あっ猫じゃない、たぬきだ! 驚いている間に、たぬきはトトトッと――実際には「とてとてととと」くらいの速度で――どこかへ消えていく。人間と鉢合わせたというのに、なんだか妙にのんびりとした歩調が印象に残った。 帰宅してから調べたところ、東京の町中で見かける野良たぬきは捕獲も駆除も必要のない生き物らしい。何故ならたぬきは、東京での暮らしという点において我々人間の先達であるからだ。 なるほど。あの印象深いのんびりとした歩調は、ずっと前からこのあたりで暮らす重鎮の貫禄が滲み出たものであったのか。 たぬき先輩には及ばぬものの、私とてこの町での暮らしはそこそこ長い。先ほど遭遇したときはうっかり「アッ」と声を上げてしまったが、次からはそっと目礼して静かに通り過ぎるくらいの威厳を見せてゆきたいものだ。

だいじょうぶかなあ?

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 仕事終わり、すみっコぐらしの映画を見に行った。 すみっコぐらしはアニメや絵本は追っていないのだけど、水色のとかげと緑色のとかげ(ホンモノ)のぬいぐるみを持っている。 映画は泣けると話題になった1作目、良質な子供向けの2作目ともに劇場でKさんと観た。 もちろんと言うべきか3作目となる今作もKさんと観ることになった。 このシリーズの映画はこの人と見るものだと恒例化したのは名探偵コナン以来だろうか。コナンはゴールデンウィーク帰省の際に、母と見ることを年中行事にしている。 まあ、本当は昨日はМさんも来る予定だったのだ。あいにくの体調不良でお休みとなった。 この3人、あのエモいおそろいのイヤリングを持つ仲である( 以前の日記 ) しかも先週もリンゴタルトを食べるために3人で会っている。 長野をともに旅をしたリンゴ菓子好きのМさんが品種を名乗ってるリンゴスイーツがコムサにあるよ!と見つけてきて、自然とKさんにも声をかけて、スイーツに興じながら、そういえばすみっコどうする?と映画の日を決めた。 用事を1日にまとめられないのかと思われるフシもあるかもしれないが、好きな人とは何度会ったっていいではないか。私は会いたい。 ただあんまり頻度を上げすぎるとその反動が後で来ることも経験でなんとなく予感している。 リンゴタルトの集いでは、Мさんがタイ土産と称して象柄のポーチを色違いで3個買ってきてくれた。 おそろいだ。またしても、エモろいだ。 映画を観る前の夕飯は新宿の老舗洋食のアカシアにした。 ここで食べるべきはロールキャベツだが、オムライスもクリームコロッケも頼み、Kさんのカレーもヘルプで吸い込んだ。お子様ランチか。 それでもまだ時間に余裕があったので伊勢丹会館の喫茶店で珈琲を飲んだ。 すみっコぐらしは安心して見られる。みんなが互いを自然に思いやって、それぞれの得意なことを活かして頑張ってそれがなんだかんだうまくいく優しい話が好きだ。その人をその人たらしめる「もったい」が壊れてなくなっちゃっても大丈夫だよという励ましのメッセージもあったように思う。エンディング、すごいなパフュームはなんでもかんでもディスコにしてしまうんだなと笑ってしまった。 Kさんとは近日中にゲゲゲの謎を見る約束をして別れた。

ふゆだ

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さむい。寒すぎる。 ほぼ立ちっぱなしで仕事した土曜日を経て、日曜の今日はお昼近くまで布団をかぶっていた。お昼に約束がなければ一日中そうしていたかもしれない。が、今日はやまおり亭さんにりんごをもらう約束をしていたので、なんとか這い出た次第である。 こういうちょっとした約束は大変ありがたい。外に出るための動機として、強制力がはたらくからだ。なんとか外出できるだけの体裁を整えて家を飛び出し、りんごを受け取りつつすこし立ち話をして、そのまま食事をとりに街に繰り出す。 さむい。寒すぎる。 真冬用のダントンのダウンジャケットを引きずり出して正解だった。 この寒さで、先週は思うように歩けないほど混みまくっていた中道通りも大変快適な人口密度で、いつもは並んでしまってなかなか入れない店にもするりと入ることができた。 久しぶりのシフク食堂。 外の立て看板には日替わりが煮込みハンバーグとあり、カウンターが空いているのも見えた。この店、テーブルとカウンターのエリアが分かれてるから一人で入りやすくて本当に助かる。 煮込みハンバーグ、といいつつおかずの品数が実に多くていろんな味を楽しむことができ、ごはんの量が少ないかもしれないと危惧したが全体の量としてはちょうどよかった。そうそうこういうのが食べたかったのよ。スープもコンソメキャベツでとても温まった。朝ごはんを食べていなかったので、吸い込むように平らげてしまった。 以前来たときはまだ比較的新しい店で、オペレーションが安定してなかったのかスタッフが叱られてたりしてハラハラしたものだが、今日は抜群の安定感。 そりゃあれだけランチで並べばな。みんな猛者になるわ。 一人でいると店内の会話をつい聞いてしまうが、近所の常連のおじいさんが誕生日をお祝いされてたり、実は二階をイベントに貸し出してたりと楽しい話がいろいろ飛び込んでくる。今日は上でフランス紅茶の試飲と販売をやっているというので、食事のあとに私も上がってみることにした。 フランス紅茶ってなんだ。そのあたりを聞くのを忘れたが、いろんな種類のフレーバーティーと焼き菓子がそろっと並べられていて、普段遣い用とクリスマスに向けたギフトパッケージがあって、お店のお姉さんがいろいろと教えてくれて、自分用と妹の誕生日ギフトにちょこちょこ買った。ポット一杯分の茶葉をアソートで買えるのがとてもありがたい。しばらくティー

とろりおいしい

もつ鍋の季節だ。 数日前、パートナーが出先の八百屋さんで大量のニラと、たいそう立派なキャベツを一玉買ってきてくれた。そして一昨日の夜、近所のスーパーでガツ(豚の胃袋)を買った。 ガツを自宅で調理するのは初めてだったので調べたところ、火を通すとかなり歯ごたえが出てモチモチになるらしい。ので、これって大丈夫なのかしらと思うくらい細かく刻んだ。ついでに安売りしていた牛タンの塊も細かくして、一緒くたに下茹でした。 宴は昨夜。祝日の前祝いだ。下茹でしておいた肉類の鍋に、大量のキャベツを投入し、煮込む。味付けはスタンダードな味噌か、周囲ではあまり聞かない塩かで迷ったけれど、まずは薄めの塩でいくことに。これなら後からいくらでも調整がきく。キャベツがくたりとするまで煮て、最後に生のニラを追加して一瞬だけ火を通したら完成だ。 鍋と言いつつ煮込み料理のようになったので、小鉢に盛りつける。この小鉢はつい先日、近所の小さな居酒屋さんの前に「ご自由にお持ちください」の張り紙とともに並べられていたものだ。ちょっと早めの大掃除でもしたのだろうか――こっくりとした濃い茶色のうつわに、焦げ茶色の釉がとろりとかかっていて、この小鉢に入れるだけであらゆるものが〈お店のちょっといい突き出し〉の様相を呈す。さすがは居酒屋さんの食器だなあ、と、使う度に感心してしまう。 肝心のもつ鍋(のような煮込み)は塩だとやはり少しだけ味気なく、小鉢のヘリに赤味噌を擦りつけて、そいつを舐めつつ食べた。ガツも牛タンも脂の少ない部位なので、肉が二種類も入っているのにさっぱりと美味しい。 もつ煮込みといえば味噌風味であることが多いように思うが、それにはしっかりと理由があるのだろう。なんせ味噌は塩よりも焼酎のソーダ割が進む。味が濃く、風味も強くあるのがいいのだ。 最後は味噌を煮汁に溶かし、七味も入れて、なんちゃって味噌汁にして締めた。 そういう祝日前夜を過ごした翌日。今日の昼は昨日のもつ煮込みの汁をちょっと取り、出汁で薄めて醤油で整え、温かいそうめんを入れて食べた。 温かいそうめんを食べながら、ふと、迫りくる年末のことを思う。ゴミ収集業者さんが仕事納めしてしまう前に大掃除をしなくてはいけないし、久々に東京で過ごす年末年始に何を食べるか考えなくてはいけないし、そういえば家庭用プリンターを今年こそ買うぞと決心していたのに今年がそろそろ終

夜も眠れぬ魔王様

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 リンゴタルトの話と迷ったんだけど、何度目かになるおばけキャッチの話をしてもいいかなー?(いいよー) 火曜日はやまおり亭さんと象の像の前で落ち合ってリンゴを頂いた。いつもは私があげる側なのでちょっと新鮮である。草群さんともそうだけれど平日にパパっと待ち合わせして短時間でも言葉を交わせるのは、ご近所感もあってなんだか嬉しい。 その後、バインミー( 以前の日記 )で腹ごしらえをして、ボードゲームカフェ『キャラバンズベース』に向かう。今宵はおばけキャッチ練習会をするのである。 何しろ私は12月3日に広島でのおばけキャッチ大会を控えている。チーム戦と個人戦が1日で行われ、チーム戦は三人一組でエントリーするのだが、私が今回東京で組んだチームメイトは、このボードゲームカフェの店長Kさんとおばけキャッチを通じて知り合ったAさんだ。 広島では大会前になると複数人でのおばけキャッチ練習会が盛んに行われ、遠く離れた地でその様子をSNSでそわそわ羨ましく見ているのに耐えられなくなったので、我々も集まることにした。練習会ということもあり、主催から寸法を聞き出して大会公式のバトルフィールドを設置することにした。 通常の遊び方とは異なるので努力型のKさんとAさんは慣れる必要があると思ったのである。私はおばけキャッチで遊べればなんでもいいこだわりがないというか気にしない質なので6月に単独で広島に乗り込んだときもすぐに順応してしまったが、それは天才型であって努力型ではないからなのだ。 Kさんが到着するまでは、そこにいたお客さんたちとチャレンジャーズビーチカップを遊んだ。チャレンジャーズ流行ってんな!遊び方を忘れる前に遊べるのでルール説明いらずよ。そして優勝した。カードの引きが良くて強いデッキができたおかげである。 8時過ぎにKさんが到着してからは、テーブルを拝借して先程のバトルフィールドをセットし大会形式でおばけキャッチを遊ぶ。やはり慣れぬフィールドはやりにくそうだ。 9時過ぎにAさんも到着し、その場にいただけで巻き込まれた哀れな客Iさんにカードをめくってもらったり、私の対面で参加してもらったり。 練習にかこつけてこんなに遊べて楽しいなあ。大会ともなるとたくさんの試合をこなすことになるので体力や集中力の持続も必要なんだろうなあと思いながら、後半はカロリーを消費しすぎて空腹を覚えていた。遠征の持ち物

おいおいすっかり

街が年末ムードだ。 先週末はともすれば永遠に布団から出られないところだったが、やまおり亭さんとこの招文堂に新刊を納めに行き、担当フェア開催中の店に顔を出してパネル設置を手伝いがてらお客さんに営業トークをかまし、テンション爆上がったお客さんに巻き込まれてなぜか一緒にぴょんぴょん跳ねることになった土曜、街に繰り出してお買い物をするのだと固い決意だけを胸に午後三時までだらだらと家のことをやったり昼寝したりして、ようやく出かけたら日は傾いてるわカフェはどこもいっぱいだわで結局春木屋でワンタン麺食べたりとか でもまあこの「まあいいか」でズルズル過ごしている感じが、忙しさがいくらか落ち着いたことを示している。 ずっと張り詰めてた反動で本当に気が緩んじゃって、多少仕事に支障が出ている気がするけどちょっとくらいいいだろう。これが普通だ。 さて、吉祥寺は中道通りからちょっと曲がったところに「SOY BEAN FARM」という洒落たお味噌やさんがある。 各地の味噌を楽しめるランチもやっていてとても美味しい、が、私はもっぱらここで手に入る「加賀粒みそ」に夢中だ。 味噌汁、とくに豚汁を作るとちょっと汁気の多い煮物になってしまうので、甘い味噌を使うと味噌汁全体があまあまになってしまう。ので、辛口でしっかりした味の味噌がいいとリクエストしたところ、勧めてもらったのがこの「加賀粒みそ」だったのだ。 色が濃くて、全体的につぶつぶしている。と思ったら、豆のかたちがごろごろ残っているのだ。この豆がまたうまい。このみそで味噌汁を作るだけで、具が勝手にひとつ増えている。もちろん食べごたえ抜群である。 欲張りの味噌だ。 さて、ずっと買いに行けなくて切らしていたのでようやく昨日買いに行ったところ、いつもは厨房に立っているおじいさんが対応してくれた。私が脇目もふらずに「この粒みそください」と指差すと、大きなアイスクリームみたいな紙カップに500グラム山盛りしてくれて、おもむろに「牛タン食べられる?」と聞くのだ。 牛タン? もちろん、なんなら大好きですが。 にやりと笑った彼はやおら包丁を取り出すと、ほろほろしたお肉を細く切り始めた。手近にあった皿を引き寄せて、ぺろっと盛る。 「牛タンを赤ワインで煮て、ガーゼで包んで赤ワインとこの味噌で一日だけ漬け込むの」 つまんだお肉はよく味噌に漬かって、ちょっとお酒が欲しいほど

方眼偏愛

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前回の手帳とノートにまつわる日記、思ったより引かれなかったな……という安心感のもと、買いたてほやほやの品々に限定しつつ、今 回もノートについて話す。これが私のリアルな十一月なのだ、ともするとマニアックな話が続くがご容赦願いたい。 今日はリングノートを三冊、薄い糸綴じノートを一冊、ふせんのストックを一つ買った。 コクヨそふとリング A5サイズ 方眼 Campus S5サイズ ヨコ 方眼 ロルバーン ミニ(A7サイズ) コクヨのそふとリングは以前より、小説書き仲間のHさんから「ネタ帳にすごくいいんですよ」と推されていたものだ。「そふとリング」の名前の通り、リングノートのリングの部分が、ぷにっと柔らかな樹脂素材になっており、書いているときリングが手を邪魔しない。しかもページごとにミシン目がついており、ページを切り取って別の場所で保管することもできる。売り場で目にするたびHさんのことを想い返しつつ、手元に置くぞと決心するまで半年かかったが、ようやくタイミングが巡ってきた。 Campus S5サイズは完全にときめき買いだった。S5サイズとは、おおよそB5の半分くらいの大きさであり、パソコンのキーボード前に置いたとき使いやすいサイズであるらしい。私はキーボード前にアームレストを置いているし、思い浮かんだことを即座にメモする用のちいさいノートは別にあるので、このCampus S5がパソコン前で活躍することはなさそうだが、しかし、そんなことはどうでもいい。これは可愛いから買ったのだ。可愛らしいノートがあると生活が前に進む。いつかその日が来たときに、このノートは私の生活をぐぐっと前に進めてくれるであろう。 ロルバーンミニは、屋外で日々の記録を取るために買った。今は屋外持ち歩き用に無印良品のフラットに開くノートA6 横罫縦ドットを使っているのだけれど、A6ノートはジーンズのポケットに突っ込むと数週間でボロボロになってしまう。もう少しこぶりであれば、あるいはなんとか……そう思い、もう少しこぶりで、無造作に持ち歩けるノートがほしかったのだ。今日買ったものの中で唯一、使い道を決めた上で買ったノートである。 無印良品 A5 方眼 無印良品 インデックス付箋 突然だが私は方眼のノートが好きだ。というより、方眼ノートに執着している。方眼を前にすると頭の動きが三割増になる。のみならず罫線の印刷は薄け

お局様デザインはありますか?

 新しい眼鏡を買った。 私は小学 2 年生の頃から眼鏡をかけている。コンタクトにしたことはない。 眼鏡をおしゃれアイテムと認識したこともないので、基本 1 本をメインに使い、ぼろぼろになったら変えていくというスタイルだ。 長らくメタルフレームの時期があり、レンズの形は卵形、長方形などその時の気分で選ぶ。約 10 年前は赤いセルフレームで遊び心を出してみたが、今の眼鏡は営業活動で外回りをしなければいけない時期に作ったので、カチっとしつつきつい印象を与えないよう細い暗色メタルフレームのオーバルレンズだった。 で、留め具も緩んできてすっかり鼻眼鏡だし、レンズも傷だらけだしそろそろ新調するかと眼鏡屋に行った。デザイナーズブランドの高級品である必要はないので JINS と Zoff をうろちょろする。重度の近視であり、自分ひとりでは試しにかけた眼鏡が似合うのかどうかぼやけてわからないため、率直なアドバイスをれる I さんを伴った。 前回と同じようなデザインを選ぶのは簡単だ。でも、それではつまらない。私はそろそろ会社でも冷静さや真面目さだけでなく(現実は置いておいてそういう風に見られている)、ふてぶてしさや個性を出していく時期だと考えている。そうしないとつまらないんだもん。「なんか変わってるけど気のいいひじきさん」「おもしろくて仕事ができるひじきさん」を眼鏡から醸し出していきたい(現実は置いておいて)。 でも、尖りすぎは目を付けられて注意されそうなので、ビジネスとプライベートのギリギリをつきたいと思うとなかなか難しい。 本当は新渡戸稲造みたいなクラシカルな丸眼鏡の方が好きだし、実際結構似合うと思うのよ。 あと近年トレンドの大きなレンズが私には似合わないようだ。それを加味するとだいぶレンズの形が制限される。いくつもかけて、違和感のなさとわくわく具合を確認・調整し、最終的にブラウンのセルフレームでそこはかとなく丸眼鏡に近いデザインに落ち着いた。 選んでおいて「またか」と思ったのは、それがジュニア用だったことである。 私は小顔ではないが面長なので、レンズの大きさに加えてフレームの幅の広い眼鏡が似合わない。10年前の赤縁のときも、成人をとうに超えていながらジュニアデザインでぴったりだった。 よろしくね、私が世界を見るための新しい相棒。

野分

仕事では怒涛のイベント進行三連戦、その間に趣味の新刊を出し同人誌即売会に出店するという気の狂いそうなスケジュールも一旦落ち着きそうな今日このごろ。 疲れと気の緩みがどっと出て小ボケを多数かまし、関係者を右往左往させている草群です。 どうもごきげんよう。 イベント進行三連戦、とはいえ私より経験豊富な同僚や上司はそんなの当たり前の日々を生き抜いているわけだが、年のいった新人の私は這々の体である。 ぜはー。 そんななか、三連戦の第一戦目で、一日限定イベントの衣装としてつくったTシャツが反響を受けてうっかり商品化されることになった。 うわーお。 商品化といっても超期間限定の受注生産でほそぼそとやるつもりなので、家内制手工業的な製造方法は変わらないんだけど、ていうか私が一枚一枚刷るんだけど、そうなったら面白いな―と思っていたことが本当に実現してしまうとなんというか身構える。 マジ? ほんとに大丈夫かこれ? それほど、ただ楽しいだけで作ったTシャツなのだ。関係者を数人巻き込んで(主に私が)きゃいきゃい言いながら作ったTシャツなのだ。まさか代金をいただくことになろうとは。 でもたしかにかわいいし、よくできているのである。元ネタを拾い、現実世界と接続し、デザインで補強したファン心をくすぐるアイテム、という自信はある。だって私が元となった作品のファンなんだもの。わからいでか。 三連戦、会期終了までもうしばらく時間があるので経過をきちんと整理しつつ、また新しい動きをぶちこんで行きたい野望はある。 これは私に限った話だが、間違いたくないとか、怒られないようにやろうとか考えると、途端にすべてがうまくいかなくなるのだ。なんかわからないけどこうしたほうが絶対面白くなるぞ、と信じて大きな声出していると、なんだ仕方ねえなと周りが巻き込まれてくれて助けてくれる。我ながら嵐のようだと思うし、失敗はするわ怒られるわで生傷は絶えないが、苦労してのぼった山のてっぺんと、そのとき食べるおにぎりは最高なのだ。 巻き込まれた人々もまた息切れしているので、それは本当にお詫び申し上げたい。 Tシャツの件しかり、いいからやってみろって言ってくれる今の環境、ハードではあるけど本当に性に合ってるんだな。 それはそれとして、今週末はしっかり休もうと思う。今日はもう一生眠気がとれないんじゃないかというほどぼんやりしていたので…

どうせ使うからいいのだ

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草群さん、ひじきさんと同じく、やまおりも文学フリマ東京37に参加していた。各々方、お疲れ様でございました。 この日記を本に……という話はすでに二度なされているので割愛しよう。完成した暁には、非常に愛らしい一冊になること請け合いだ。今後のむらくもやまに乞うご期待。 さて私だが、文学フリマの荷解きだとか、発行したアンソロジーの献本発送作業だとか、そういうものを放り出して次の即売会の準備をしている。それというのも次の即売会が今週末の金曜夜から開始されるためであり、しかも私がその即売会――〈紙本祭5〉の主催であるがためなのだ。 開場まであと2日。オンライン上のバーチャル空間を会場とした催しなので、物理的な荷物の搬入は不要なことだけが救いである。しかし、おおよその準備は済ませているはずなのに、直近になると細々とした作業が無限に発生するのは、リアルイベントもオンラインイベントも変わらないようだ。 本当はやまおり個人の新刊も予定していたのだけれど、諸事情重なり、発行は延期とした。最初は何としてでも紙本祭5に間に合わせる予定であったのだ。だって今年はちょっとした短編とワークショップに持ち込む用の小説と、アンソロジーに寄稿する用の戯曲しか書いていない。個人名義の本を作れていない……。 そんなこんなで夏の終わり頃まではかなり焦っていたのだが、十月に入って、なんだかふっと力が抜けた。2023年はおそらく充電期間だったのだ。来年に向けてネタを溜め、整理し、書き物の技術を磨くことに専念するとしよう。そう思えた。 というのも十月に入り、来年用の手帳を買ったからなのである。とっても可愛いのでぜひ見てほしい。 ベージュの表紙に干支の龍。金の箔押し。大好きなロルバーンというノートの、ダイアリー版だ。いつもはもう一回り小さなものを使っているのだけれど、来年用はたっぷり書けるA5サイズを選んだ。 私はカレンダーや手帳を複数使いするタイプで、持ち運び用の「スケジュールをチェックする」ためのパスポートサイズ手帳は別にある。あるのだけれど、それはそれとて可愛い手帳を見るとつい買ってしまう。どうせ使うからいいのだ。毎年、この時期……翌年の手帳が発売される十月から十二月にかけて、私の財布の紐は緩みっぱなしである。なんなら一月になるとその年の手帳が安売りされるので、その時期も各所の文房具売り場を徘徊している。 手帳

現地妻来たる

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 草群さんが日記に書いていた文学フリマ東京37に私も参加していた。というかむらくもやまの全員が別のサークルとして出店していた。朝、流通センター駅のトイレに並ぼうとしたとき、黄色い折りコンがふと視界の端をよぎって、(草群さん、折りコン買ったってXで言ってたな、ああいう色の買いそう)と思いながら後ほど会場で見たら果たして草群さんの物だったし、サークル入場の入口で見覚えのある人が向こうから来ると思ったらやまおり亭さんだった。我々、歴は違えど、みなそれぞれ同人誌を作っては頒布することを趣味としている。 この日記を物理の本にして頒布しようという動きがあったことは、草群さんの投稿にあった通りだ。私自身は極道入稿(本来印刷所が設けている締め切りをぶちぎって、イベント目前に入稿し、金の力にものを言わせて超短期間で印刷してもらうこと)をしたことがない優等生なので、今回の動きはすごくワクワクした。非常事態にテンションが上がるタイプの人間なのだ。じっくり考える暇がない時の方が、雑に声を出しやすい。なにやる? これやる? 次なにやる? 出すだけ出して、丁寧で着実なやまおり亭さんが形にしてくれ、多忙な草群さんが比重の一番重い部分を請け負ったりして、「ゆ、有能……」と感心していただけだったが。自分の日記は、見返すとだらだらと長く、ぱっと切り抜けるキーワードはお二人に比べて薄い。読点もシッチャカメッチャカだったが、それも日記であろうと思うので今後も直す気はない。3人での物作り、楽しかったのでぜひ近いうちに続きをやりましょう。 文学フリマの翌日は、まず吉祥寺で行われている朝市に出かけた。全国の焼き菓子をセレクトする出店があり、フィナンシェを獲得。その後、招文堂として出店しているやまおり亭さん(イベント翌日の寒い朝からご精が出る)に挨拶をしてリンゴを押し付けた。素質があると見込んだら、お店のみならず朝市まで追っかけてリンゴ渡してくるのよく考えると怖いね! 粘着質! 上野に向かい、愛知県から遠征していたKさんと合流する。 Kさんは大学の頃からの付き合いで、私が名古屋に行くときには遊んでもらうので通称現地妻と呼んでいて、舞台鑑賞やイベントで彼女がこちらに来るときはなるべく会うようにねじ込んでいる。 文学フリマに出品する合同誌を作る間柄であるので、昨日は交代で店番をした。 今日はKさんが宿泊していた家主の

山場を越えました

気がついたら一週間空いてしまっていて白目を剥きそうだが、このかん草群は大変な山場を迎えていたのでご容赦願いたい。 先週の金祝・土はイベント対応で朝から晩までびっちり動き続け、日曜は自分の原稿とこの日記の追い込み、月曜からの仕事は次のイベントの大詰め作業と社内提出期限の迫った10月分の報告書、とぎりぎりまで帰れない日が続いていたので、生きるのに精一杯であった。 金曜はなんとか代休をねじ込み、本日文学フリマという同人誌即売イベントに元気に出店して、ようやく人間らしさを取り戻したところである。 ……家の中が大変なありさまになっているので、ここは明日なんとかするとして……。 本来はこの日記の9月末までの分を「新鮮なうちに本にして出したいね」なんて楽しい目論見があったのだけど、ひじきさんとやまおり亭さんに超速確認作業をしていただいたにもかかわらず落としました……印刷所の予約をミスったのと、入稿データ作業がどうにも間に合わなくて。 とても残念ではあるのだけど「また今度で大丈夫」と言ってくれた二人の優しさで仕事も頑張れたのと、奇しくも各々の処理能力の高さを実感することになったので、これはこれで……。いや、お前が言うなという話ではあるんだが……。 縦書きに版を組んでみて、やっぱり読み応えが変わるのとやっぱりみんな面白いので、本にできる日を楽しみにまた粛々と準備を進めたい次第。 またかわいい本作っちゃうぞー! 昨日の代休で母と妹としこたま飲み食いしてきてかなり元気になったので、今日の文学フリマは一日楽しく過ごすことができた。 東京流通センターの最も広い第一展示場、もうすこしコンパクトな第二展示場2ホール、すべて使用しての開催で、私は初めて第二展示場に配置されたのだけど、ジャンルが絞られている分来る人も限られるが、なんというか打率が高くて居心地はよかったように感じた。 たくさん人は通るけど見向きもされない、というのはそれでなかなかしんどいもので、まあ不意の出会いもあるから一長一短ではあるのだが、噂に聞いた第一展示場の混雑がおそろしくて今回はほぼどこにも行きませんでした。 不義理をしてすまない……体調もちょっとアレだったのでお尻に根っこを生やしていたのだけど、「動かない」と決めてしまえばものすごく気が楽だったので無理しなくて良かったとも思う。 積読もえらいことになっているし。おもしろそう

星の金貨

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ここに新しい記事が投稿されたら、メールが届くように設定できる……ということを、先のひじきさんの日記を読んで初めて知った。なんと素晴らしい。便利がすぎる。さっそく登録しました。 これで日記のお当番を、忙しくもないのにスッとばしてしまう事態は今後ぐっと減ってゆくであろう。ご期待ください。 さて。少し前の話になるが、十月の下旬に、こういう場所へ行ってきた。 青森は弘前市にある、「りんご公園」だ。 写真は駐車場を区切るための、小さな芝生。街路樹でも植えているのかと思いきや、こんなところにまで立派なりんごが実っているのだから驚いた。 いや、別に……などと言い訳をする必要もないのだが、りんご公園に足を踏み入れることになったのは、まったくの偶然が重なった結果だ。 パートナーのご両親が美術展に行くのを趣味の一つとしている方々で、ありがたいことに私にも声をかけてくれるため、しばしばお供させてもらっている。このときは青森県立美術館の『奈良美智: The Beginning Place ここから』と、花巻市博物館の『かがくいひろしの世界展』を目的としていた。 せっかく青森まで来たのだからおいしいりんごを買って帰りたい、ということになり、旅館の方にオススメの売店を尋ねたところ、「今このあたりで売られているりんごは早生(わせ=本来より早い時期に熟れたもののことを指すらしい)が多く、早生のりんごは日持ちしないから持ち運びには向かないかも。りんご公園なら早生ではない品種も売っているかもしれない」と教えられ――ならば「ゆこう」と、そういうことになったのだ。 時間の都合上、目的のりんごを入手するや否や、早々に公園を後にすることになったのだけれど……広大な地に、見渡す限りの果樹の畑。いっそ面白いほどに林立するりんごの木に囲まれていると、吸い込む空気までもがさっぱりと甘い果実の香を含んでいるような気がしてくる。とても気持ちのよい場所だった。 そうそう。りんごを買うとき、せっかくなので耳慣れない品種を試食させて頂いた。 「星の金貨」という名だそうで、黄色くて皮が薄く、独特の甘みがある。私はりんごだと同じく皮の黄色い「トキ」が好きなのだけれど、そのトキとも、つい先日に味を知ったばかりの「さんさ」とも違う、ちょっとウッディなかおりの混じった甘み……。 有識者の意見も聞きたくて写真を撮ってきた。 最近、諸事情あ

あいもかわらずガイスター

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 草群さんが日記を更新していることに気が付かず日が空いてしまっ た。通知メールが届かなかったのだドウシテ。いいもん、今秋ハロウィンだったし、おばけの話をします。 おばけと言っても、私のおばけはおばけキャッチのおばけである。 7月の「白髪の道場破り」にも書いたが、 ボードゲームのおばけキャッチと聞けばどこにでも参上するひじき は、28日に第4回巨大おばけキャッチ大会に出場した。 この大会は誰一人知り合いのいなかった第1回から参加していて、 第2回と第3回は優勝している。 あまりメダルをもらう人に偏りが出るとつまらないから、 チャンピオンとしてどんなハンデも受けるよと事前に宣言してあり 、 今回メダル保持者は一般参加者より長い距離を走るということにな った。 走る、そう、この大会、走るのである。 二十数m先の巨大なパネルに向かって全力疾走する、 勝負が決まるまで何本も続く、 もはやボードゲームとは別の競技なのだ。 まあ、おばけキャッチならとりあえずなんでもやるんですけど。 私は、昔から運動神経も持久力もない。 第2回と第3回は室内開催で走る距離が短かったので判断の速さと いうスタートダッシュに物を言わせて勝ち残ったにすぎない。 公園の一角を借りて巨大パネルとスタート地点を準備し、 10人を3つにチーム分け。 予選からハァハァ息切れしたが、ハンデはいい感じに作用した。 そして決勝戦。 ここで第1回チャンピオンのAさんと当たる。 そう、Aさん、手足の長い体力のある男性で、カード判断も速く、 私はリーチの短さで1回目は準優勝だったのだ。2回、 3回もAさんが出場しなかったから勝ったに過ぎない。 真のチャンピオンとは言えないというコンプレックスがある。 そして今回も負けました〜Aさん、おめでとうございます。 途中勢い余ってすっ転んで膝をズボンごと擦りむいて血が流れたあ たりから、勝ちへの執着が薄れてしまった。 決勝戦はさすがに4人ともいい勝負で、 ということはすぐには決まらずめちゃめちゃ走らされる。 どれを流してどれを全力疾走するか見極めないと持たない。 ちかれた。火曜日くらいまで筋肉痛になった。 おばけキャッチのために今から走り込みをして鍛えるか……?え、 草群さん、どうしたらいい? 巨大おばけキャッチのあとは、巨大ジェンガと巨大キャプテン・ リノと巨大トランプと巨大ドブルで