軒先の仁義失礼さんにござんす

 風が強く吹いて三月を連れてきた。


いつもどこかに出歩いて予約の取りにくいイメージのある(といわれる)ひじきだが、ここ数か月、実は土日に人と会う予定は少なめである。

予定が入る傾向として、平日の夜の率が多くなっているのは、私に声をかけてくれる人々が多忙であり土日の予定はすでに埋まっていて、合わせるとなると平日に設定しがちだからだろう。

なので、直前でもお声がけくだされば結構動けます。誘ってください。


予定の入らなかった土日に何をしているかというと、年明けからは阿佐ヶ谷の映画館に何度か行った。


ラピュタ阿佐ヶ谷という劇場をご存知だろうか。


駅から5分とかからない、大きなスポーツクラブの裏手に、不思議な外観の建物がひっそりとたたずんでいる。


私は今年の1月までラピュタの存在を知らず、初めて足を踏み入れた。


きっかけは12月に吉祥寺のパルコの地下にある映画館で、ガザに関する映画を2本見たことに始まる。


文学フリマ東京であいさつ回りをした際、Oさんにガザのドキュメンタリー映画を紹介された。

人におすすめされたならいままでの自分の候補になくても見に行くのが私の性分である。きっかけさえあれば好みかどうかを事前判断せずなんでも吸い込もうとする。

近所の映画館であるアップリンクでやるというから、先に述べたように暇な土日にのこのこ出かけて行って、ガザのドキュメンタリーと書かれていた回のチケットをとって見た。


女性ジャーナリストの話なんですと、Oさんは言っていたはずだ。

ところが、始まった映画は、ガザのドキュメンタリーには違いないのだが、男性のミュージシャンの話だった。

女性ジャーナリストは1ミリも出てこなかった。

???

首を傾げながら見終わって、確認したら、

同じ映画館で同じ日にガザのドキュメンタリー映画2種類やってんのかよ!!

よく確かめなかった私が悪いです、はい。

後日改めて女性ジャーナリストの方のも見た。でも、その映画についての感想をここで述べる気はない。


アップリンクは数年ぶりに行ったのだが、ここは大型シネコンとは違い、ちょっとこだわりのミニシアター系の作品が多く上映されている。

で、上演を待つスペースにフライヤー置き場があるんですね。アップリンクで上映しないこれまたミニシアター系の映画のやつも置いてある。

そこをなんとなく眺めていたら、目に入ったのは


「血湧き肉躍る任侠映画」


健さん!

刺青をいれた上半身裸で刀を握った高倉健が中央にドーンと配置されたフライヤー。


思わず手に取れば

純子!文太もいる!

場所はどこ??

阿佐ヶ谷!近い!


フライヤーを握り潰しそうな勢いで帰宅し心を落ち着けて熟読したところ、

2026年1月2日~3月7日にかけてラピュタ阿佐ヶ谷で36本の任侠映画を上映するという。

そのラインナップで私が既に見たことがあるのは3本ほど。

ヤクザ映画200本見たとかうそぶいていても、全然にわかじゃん、私。


あ、一応説明させていただきますと、ひじきは肩書のひとつに「フィナンシェヤクザ」を名乗っている。

過剰な行動を評されて人にそうやって呼ばれるようになってから、「やばい、ヤクザを名乗るのにヤクザの事なんにも知らない」という危機感を覚えた。

知らないことを名乗るのは怖い。勉強する必要がある(そうかな)

フィクションヤクザの用語、言い回し、所作、仕草を身につけるべく、仁義なき戦いを始めとする東映実録路線、玉石混交のVシネマ、今なお新作が出続ける日本統一などを視聴して数年になる。

東映スターも、Vシネ四天王も、ネオVシネ四天王も、何度画面で見たことか。

知らない人が想像するより怖くないというかコミカルだし、小難しいことを考えずにひとりで突っ込みを入れながら頭空っぽにして楽しめるからストレス発散にいいのだけれど、連日連夜見すぎると寝不足になる。「ヤクザは体に悪い」とぶつぶつ言いながら、しばらく休憩期間を置き、気が付くとまた見始めている。


で、任侠映画だが

これは1960~1970年代に特に東映で人気を博した映画ジャンルだ。

それまでの東映は時代劇が稼ぎ頭だったのだが、主役が着流しヤクザに変わった。

旅をしながら博奕を打ち、義理人情を重んじ、自己犠牲を苦にせず、我慢して我慢してでもどうしようもない悪者を最後は成敗する。

型が決まってるので、まあ、ほぼ時代劇だよね。

「おひけぇなすって」って中腰で片手を前に出して仁義を切る口上を述べるの、なんとなくイメージあるかもしれないけど、まさにあれの世界ですよ。


当時の映画業界は売れる路線だと見込んだら、短いスパンでがんがん同じようなのを作るので、鶴田浩二、高倉健主役の任侠映画作品がめっちゃたくさんあるのね。

サブちゃんこと北島三郎もちょちょっと出てきたりする。(おめぇ歌はうめぇなとか言われたりする)

悪役も決まった人で顔の大きい安部徹、天津敏、遠藤辰雄あたりが出てくると、最初の一セリフ目を発する前からはいはい悪い人ねってわかる。


……語りすぎてますか?


私は食べ比べとおんなじで大量摂取が好きだし、現代ヤクザ映画からシームレスに任侠映画も抵抗なく見ていたので、このラピュタ阿佐ヶ谷のキャンペーンにのるっきゃないと決めた。


さすがにぶっとおして30本全部見るわけにはいかないので、めっちゃ厳選しました5本(あと1本増えるかも)


選んだ基準ですか?


役者です、好きな役者


藤純子か嵐寛寿郎が出ているやつ


藤純子は、任侠映画界に可憐に咲いたアイドル

鶴田や健さんの相手役になることも多いけれど、

女だてらに渡世人として強く生きる主役作品が特に好きだ。


そしてアラカンこと嵐寛寿郎はさっきの悪役常連とは逆に絶対に正義側の役をやるかっこいいおじいちゃん。網走番外地で初めて見て以来、私はこのじっじが出るとにこにこしちゃう。でも筋の通った善の親分だから、たいてい殺されちゃう悲しい。


それと、健さんが特別に好きというわけでもないけど、任侠映画の名作、代表作といわれる作品はこれを機に押さえておこうと見ることにした。


ラピュタ阿佐ヶ谷は1回1400円で映画を見られるが、会員になると1000円なのでもちろん会員になった。


試写室みたいな30席ほどの小さな映画館で、客席の背後に映写室がある。


客層は中高年男性の一人客がほとんど。世代だものね。


上映時間になると学校で聞いたようなチャイムが鳴り、ゆっくりと幕が開き、連動して暗転していく。


古いフィルムには時折ノイズが入るが、

テレビとは違う大画面での立ち回り、顔のドアップ、監督の演出の癖みたいなのがよく見えてよかった。

家での視聴時と違って、「純子えっちぃぃ~その目線はエロいって」とかつっこみは声に出せないけど。


待合室に当時のポスターを飾ってくれているのも嬉しい。デザインやキャッチフレーズがおもしろいのよね。


ここまで書いといてなんですが、


ヤクザ映画全般を人にお勧めする気は全くないので、安心してほしい。

私がこんなにたくさん見てるんだから、すごくおもしろいんだろうとか思わないでほしい。

つまんないのも多いし、貴重な時間を無駄にすることはないよ。


やまおり亭さんのパートナーが日本統一に手を出して、小沢仁志のYouTubeチャンネルまで見始めたと聞いたときは、嬉しいよりも「ほんとごめんて!」という言葉が先に出た。

いや、日本統一はいいVシネですよ。話数多いけど。


あ、だから、万が一ヤクザ映画に興味を持ってしまったら、向いてそうな作品をおすすめすることはできるかもしれないので、一回声かけて?

地雷除けくらいにはなるように、飽きないうちは勉強しておきます。

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