バゲットのイデア
先日のむらくもやま会で、「見かけたらつい選んでしまう食べ物」の話になった。たとえば、草群さんにとってのキャロットケーキ。たとえば、ひじきさんにとってのフィナンシェやスープカレーやバインミーを始めとした、各種のしっくりとおいしいものたち。 私にとってのそれは、今のところ、バゲットとバタールだ。とはいえ自分から新種を開拓しにゆくほどの熱量はなく、あくまで見かけたら選んでしまうくらいのもの。白ワインを飲むときのつまみとして、ベビーチーズとともにあったら嬉しいねというくらいの距離感でやらせてもらっている。 などと言いながら大容量の紙パック入り白ワインを嗜んでいるもので、これまでになんだかんだと、6、7店ほどのパン屋でバゲット、ないしバタールを食べてきた。 それだけ食べていれば流石にこれといった「好み」が生まれそうなものだ。実際、特に制約のない状態で買うならこの店、という気に入りもできた。できたのだが、バゲットないしバタールたちの……以降、通してバゲットと称するが、それらバゲットたちの味にかんする己の好みについては、どうにも把握できずにいた。できればクラム(バゲットの皮=クラストではない部分)はフワフワよりモチモチのほうがよく、小麦の味がしっかりあるものがよく、かつ、できれば甘い風味は抑えめがよいけれど、翻って言えばその程度であるし、バゲットたちはどんなものも等しくおいしい。 それがね? つい先日のことです。私、把握しちゃったかもしれない。己のバゲットのイデアを。 きっかけは、スーパーで某有名製パンメーカーが作っているバゲットを買ったことだ。普段から特別贔屓にしているメーカーというわけではなかったのだが、パッケージに「和小麦」「ハード系パンに適した小麦を使っている」旨が記載されており、心惹かれた。 手に取ってみると、いつも買っているパン屋のバゲットと比べても遜色ない重量感。しかして価格は100円ばかり安い。パン屋ではない場所でバゲットを買うのは久々であるから、まずはこれを食して様子を見てみましょう。そういうことになった。 いつも通りに買って帰り、切り分け、軽くトーストし、齧る。 ……あれ? これ…… モッチモチで、小麦の味がちゃんとあり、しかし甘すぎず……なんだか、ものすごくおいしいかも! そも私はバゲットのことを、クラムがモチモチで小麦の味が豊かであればあるほど、甘い風味が...