年始ドラマティック
よかったですね、劇団ドラマティックゆうや「短編傑作選」――
「劇団ドラマティックゆうや」なる面白いお芝居をやっている集団があり、その面白さといえば草群さんが上演台本を買い求めるほどなのだという話を、最初に聞いたのはいつだったか。
数回前のむらくもやま会だったはずではあるのだけれど、例に漏れずおいしすぎるお食事に脳のリソースの大半が割かれていたようで、どうにも記憶が曖昧だ。ともあれ、むらくもやま観劇ごはん会がしたいねという話が最初に出たのは、その場でのことであったはず。
仕事の早い草群さんと、フットワークの軽いひじきさんが巻き起こす波に乗っからせてもらい、あれよあれよという間に予定が決まったのが昨年末のこと。貸していただいた過去作の上演台本の表紙を――観劇後に読むと決めていたので表紙だけを――眺めつつ、年明けを楽しみにしていた。
今回のお芝居、上演されるはCEKAI大橋会館。最寄り駅は池尻大橋。ひじきさんが太鼓判を押すおいしいパン屋を横目に、駅前の道をまっすぐまっすぐ。駅前商店街の可愛らしいフラッグに目を向けながら歩いてゆけば、趣のあるフードトラックのようなものが横付けされた、レトロなのに不思議と新しい印象の建物が見えてくる。
なんかおしゃれ! いかにも劇場……いや、正式名称はアートギャラリーだったかしら。そういったものがありそうな建物だ。
三人が三人とも、「このメンバーならなんとかなるでしょう」という軽い気持ちで集合していたものだから、劇場への入口がぱっとわからず、ちょっとした階段昇降と施設職員さんとのお喋りなんかも挟みつつ……
劇場にたどり着く頃にはすっかり喉が乾いていたけれど、まったく都合のよいことに、劇場内のカウンターで買った飲み物は、観劇中にも楽しめるのだそうで。ちょっとめずらしいクラフトビールたちと迷いつつ、瓶のコーラを選んで席についた。
誰もいない舞台上には、スタンドマイクが一本。チケットを取ったあとに、どうやら「なにわシーサー’S」なる漫才コンビの出演が決まったらしいとは聞いていた。最初は「へえ、そうなんだ」くらいの気持ちだったのだけれど、あとからそのコンビが某有名俳優さん二名でもって結成されていると知り、仰天したものである。こんなに近くで拝見してしまってよいのですか? 年始早々おめでたいことだ。
運の良いことに最前列が空いていたものだから、いそいそと三人並び、開場までは年末年始のちょっとした近況を報告し合う。やがて雅やかに流れていた「春の海」がすっとボリュームを落とし、会場内がくらーくなって――
そこからは怒涛であった。
初々しさとこなれ感が不思議な塩梅で共存する「なにわシーサー'S」の漫才。そして始まる二人芝居。どっしりと深みがあり、かつ愛らしいのに、なぜか折に触れて「今この人の横っ面をぱちんとやったらどんな顔をするんだろうな」と思わされる、そんな謎の吸引力を発揮し続けるゆうやさん。そして何につけても器用であり、脚本と演出を兼ねているとは到底信じられないほど余裕たっぷり、堂々たる立ち居振る舞いと、女性を演じる際の指使いが小憎い泉田さん。
ショートショートのうち、私は擬音屋が好みであった。実は大学生の時分、擬音で卒論をやったもので……なんだか当時のことなども思い出し、しかし感傷にひたる間などは与えられなかった。動きと表情、掛け合いと掛詞。面白いものを、妥協せず、万遍なく敷き詰めるとああいった具合になるのだなあ。年明けからよいものを観ました。草群さん、誘ってくれてありがとうございました。
帰り道では、ひじきさんイチオシのパン屋で各々おいしいものを買い求め、のんびりと渋谷まで歩きながらお喋りに興じた。もちろん話題は今観たばかりのお芝居についてだ。
ひじきさんも擬音屋が好みであったと知ってちょっとうれしくなったり、この劇団のお芝居を他にも観ている草群さんによる背景情報の補足で、また次も観たくなったり。
お喋りはお夕飯にと入った草群さんおすすめの居酒屋でも途切れることはなく……こっちではもう少し俗っぽい、生活に寄せた話なんかもしたりして。どんな話題であっても盛り上がれるのは、我々になんとなく共通する「どうしたって自分の好きなことから離れられない」という性分があるからかもしれないし、こうして交換日記で少しずつ生活を分かち合っているからかもしれない。
なんとも楽しく幸先のよい、2025年のむらくもやまはじめでありました。
あっ、私が劇場で買った『星の戦い』上演台本、読み終わったら回しますね。そうしてまたどこかの会で、感想を聞かせてもらえたら嬉しいです。
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