好きなものはずっと好き

やあやあ、またずいぶんと日があいてしまった。

その間に当社比たくさんの人、特に古い友人たちと会ったり連絡取り合ったりして、あまりに久しぶりな人ばかりなので「そろそろ死ぬのかな」と思ったりした。

むらくもやまでせっかくハンサム食堂行ったのに二日酔い引きずってたしね…
その節は大変失礼しました。

一向に涼しくならない9月、回し続けたエアコンはフィルターをずいぶんほったらかしていたせいでまんまと体調を崩し、喉をガラガラいわせながら札幌へ向かったのが22日のこと。
文学フリマ札幌、ひじきさんのスペースにてお披露目となる「じゃがいもアンソロジー2」の応援、という名の食い倒れのはじまりである。
前日入りして妹夫婦としこたま飲み、イベント当日も一般入場開始を12時と勘違いして札幌の友人と遅いブランチをキメてきて、遅れて呑気に現れても「おつかれさまです」と迎えてくれるひじきさんとKさんの懐の深さ。

文フリ札幌、ゆっくり見られる規模感と空間の余裕があってとても良かった。あと、大きな窓があるから明るいし開放感がある。気持ちのいい会場だなと感じた。
スペースに椅子は2脚のみなので、応援といいつつできることの少ない(お二人が有能すぎて出る幕がない)草群はオーバーオールでイモっぽさを演出する看板と化した。じゃがいももりんごもおばけキャッチも日本酒ペロリもなんでもござれのひじきさんの軽快トークに時折茶々を入れつつ、人通りが途絶えたと見るや「提出当日に未着手の宿題」のごとく(身に覚えしかない)じゃがいもアンソロジー2の各作品の感想というか簡単な紹介文をSNSに連投し……と、ほぼなんの役にも立たなかったがしばらくぶりのイベントの空気を楽しませてもらった。
まじで何しに行ったんだ。
遊びに行ったんですね。正直でよろしい。
ひじきさんが席を立つ間は、前日すでに空港〜札幌市内を駆け巡ってへとへとになっているKさんに推しの話を聞かせてもらいながら、おいもを送り出したり、おばけキャッチと男の子の運命の出会いを見届けたり、なんだかほんとに、よい思いばっかりさせてもらっちゃったなという気持ちである。

さて、文学フリマ札幌は盛会のうちに16時閉場、
その後はもはや今回の目玉と言ってもいい「穀物祭」が控えていた。
じゃがいもアンソロジー2の寄稿者のうち、主催を含め5名が全国各地から集う、こんな機会はめったになかろうということで、じゃがいも料理専門店で打ち上げをセッティングしてくれたのである。
穀物祭、というのがじゃがいも料理専門店の名前。訪れる前から最高の予感しかしない。
予約してくれた時間まではすこし間があったので、ただでさえお腹が空いてるのにサイゼの全然見つからないことで有名な間違い探しに「見つけないと帰れない…」と全員眼球が乾きそうなほど真剣に取り組んだのち、頃合いをみてブーンと移動した。

穀物祭は住宅街のなかにあって、ツタの絡んだ建物に赤と緑のネオンサインが燦然と輝き、店内もこっくりと飴色の素敵なお店であった。
https://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010303/1001312/

お店の方も品よく落ち着いていて、入った瞬間からもう美味しいのがわかる。
で、はじめはみんなそれなりに大人しくしていたのだが、メニューを開けばもういつもの調子。なにしろお腹がすいていたし、メニューがどれも魅力的。そこからは妙にイモ語りの多い団体による吸い込み祭りのはじまりであった。
これは一体どの品種だろうか、料理によって、季節によって変わるのだろうか、こちらはホクホク、これはしっとり、とにかく全部がうまいうまいと咽び泣きながら食べる。同じグラタンでもベシャメルとトマト、ソースの違いでまったく別のおいしいものに変わるし、そもそもこのソースがべらぼうにうまい。5リットル飲みたいと言い放ったのは誰だったか、これがあながち冗談でもなくて本当にいくらでも入るのだ。揚げてもよし、炒めてもよし、ピザにしてもよしのおいもを片っ端から平らげながら、アンソロのことや趣味のこと、互いの交友のはじまりを紐解いてみたりして、気がついたら8皿もの料理を平らげていた。
あまりにも満足度が高かったため、お会計を見たときに一同の頭上に疑問符が並んだほどである。
「え、ほんとに…?」
「け、計算してみる…?」
5人でシェアしたからというのもあるが、あまりにリーズナブルでひどく申し訳ない気持ちになった。なんかこう、飲み物とかもたくさんいただいたらよかったかも、でもとにかくイモを食べられるだけ食べようって会だったからね…と口々に反省をしつつ、次でメニューを全制覇しようと誓いを立てて解散したのであった。
いや、あのお店は本当にまた行きたい。
全部ちゃんとじゃがいもの香りがして、端から端までじゃがいもなのに全然飽きることがない。おいしいものはいくらでも食べられるんだなあと心から実感した。

翌日、快晴の大通公園。オータムフェストに草群の姿はあった。
妹と一緒に昼からビールだハイボールだ飲んでいたのだが、あまりに私がじゃがいもに反応しじゃがいもばかり買うので
「お姉ちゃんまたイモ…?」
から
「あ、あそこにもイモあるけどいいの?」
と順応してくれるあたり、身内の理解というか諦めのようなものを感じて大変ありがたかった。
仕事のことや家のこと、身の回りの面白い人の話なんかをしつつ、お酒もつまみもどんどん吸い込むのがこの姉妹である。
熟成インカのめざめ、マチルダに塩昆布バター、彩りポテトと題してシャドークイーンとかキタアカリとかレッドムーンあたりが競演するカップ、途中にキュウリ漬けや濃厚ミルクパフェをはさんだりして、延々と食べては喋り続けた。
ありがとう妹、わざわざ休みまでとってくれた妹。
しかし、身内とはいえあまりイモ責めにしすぎるのもどうかと思い、ちょっとポテトブレーキを踏んだ姉であった。親しきなかにも礼儀あり、みたいな。違うか。

以来、ほぼ毎日なにかとじゃがいもを食べている。
いただいた2年熟成のメークイン(じゃがアンソロ寄稿者にひじきさんが分けてくれたもの)を蒸したり、ファーストフードのフライドポテトだったり、コンビニのポテサラだったり、なにかと手が伸びてしまうしスルッと手頃に食べられてしまうのだ。

思えば子どもの頃から芋好きで、カレーをよそえばじゃがいもだらけ、高校はサツマイモで有名な地にあり、年齢を重ねてもマックのポテトはずっとLサイズ。ひじきさんとイモ街道(これはサツマイモ)を練り歩くくらいだから、マニア度は低くてもイモ好きはもはや殿堂入りの域かもしれない。

相次いだ旧知の人との再会もあいまって、好きなものって変わらないものだなあとなんだか嬉しくなってしまった。
年齢や環境が変わって好きの表現や形が多少変わるけども。
でも、根っこのところは同じなのだ。

コメント

  1. 文フリ札幌、北海道楽しかったですね~!
    自主的に芋研ゼミ生らしい活動をされていて、えらい。
    写真撮り損ねたオーバーオール合わせ、またしましょうね(牧場とか行くか?)

    返信削除
  2. 楽しく美味しそうな、いい日記! 北海道、小学校かなにかの学習旅行で行ったきりです。自分の意思で移動でき、お酒が飲めるようになった今、絶対むかしより楽しいはず……次の機会はぜひご一緒させてください!

    返信削除

コメントを投稿