あの人は今

 気が付いたら9月に入っている。

たまに涼しい日があると「これですよ、こういうやつ!」となるが、まだ残暑は続くらしい。


8月の土日は比較的おとなしくしていた。

ここ数か月毎週末のように人と会う約束や遠くに行く予定が入る月が多かったので、あくまで当社比だが。


女子会研究会とむらくもやま会合と京都旅行くらいであとは、のんびりと朝寝をし、読書や書き物をし、ぼんやりとヤクザ映画を見て、出ても散歩程度という隠居のような生活をしていた。


家にいるなら普段見ないふりをしているあれこれに手を付けて有意義に過ごせばいいものを、まったくのんびりしてしまった。それを怒る人もいないし、怒られる筋合いもないのでそれもまたいい。


まあ、ここには平日夜に2回映画、2回クラスク、2回おばけキャッチしているのを勘定に入れていない。

夜遊びをしておいて、それはおとなしいのか?

9月以降は参加するイベントがいくつか予定されており、また忙しくなりそうだ。



さて……忘れ得ぬ人がいる。


こうして朝寝をしていると夢をぼんやり覚えたまま目が覚めるもので、


先日もその人の夢を見た。


高校生の同学年で同じ部活動であり、

大学を経て社会人になってからも数年は、仲間で集まってご飯をする程度の付き合いがあった人だ。


いまは疎遠である。


二度と顔も見たくないと言われるようなひどい別れをしたわけではない(と思っている)ので、頑張ればつてをたどり、近況を聞いたり、連絡をとれないこともないのだが、連絡をして何をしたいわけでもない。


思い出の中で美化されていき、街を歩いているときに「似ている人がいるな」と面影を探したり、たまにこうして夢に出る。頻度は数えていないが、1~2年に1度は見るだろうか。


「また見てしまった、まだ好きじゃん」と枕につぶやくくらいには思い出の人なのである。


頭の回転が速く、話はおもしろく、活発で、


先輩後輩男女問わず人気者になるのも頷ける人だった。


憧れていたのだと思う。


ユーモアたっぷりに自分の言葉で話す、人望と行動力のある姿に痺れましたわね。


細い目をことさらに細めて笑う堂々たる姿が、とてもかっこよく見えて、すごいなあと少し離れて見ていた。


憧れなので、おない年なのに、二人きりになったら、ドキドキしてうまく喋れなくて、一人反省会を開催することもしばしばであった。


まあ、きっといまでもサシになったらちょっと自信がない。


部活仲間がいれば各自にキャラの役割分担があるのもあって、楽しく話せた。


私はおとなしく冷静な文学少女的立ち位置の発言をしていたのだ。


え、今と違うって?うるせぇ。


タイミングよく掛け合いがハマってその人に「さすがひじき」と言ってもらえると、大変うれしかった。

何週間も噛みしめた。


交友関係の広いその人にとって、私はたくさんいる同級生の中の一人だっただろうが、


大学の時分、私がその人に「きっと好きだと思うよ」と何気なく紹介した本を、気に入ってくれてその本で卒論を書いたと聞いた時は驚いた。

まじかよ、卒業論文て。


そんな人が今もたまに夢に出てくる。


会いたいような会わないままでもいいような、


健やかに過ごしてくれていればいいと思う。

コメント

  1. 憧れの人って、まさかとは思うけど変わってしまっていたらどうしよう、むしろ自分が変わり果てていて失望させてしまったらどうしよう、と思って迂闊にさわれない気がします。私も覚えがあるし、ひじきさんの大事な話をきけてとても嬉しい。

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