自分で増やして自分でほどいて
むらくもやま日記が始まって、もう一年も経つとは!
遡ってみると、私は昨年の7月29日付で「日のくれぬうちに」と題した日記を書いていた。あの文章で触れたポストカードはまだ机の横に貼ってあり、憂いた夏の暑さは更にパワーアップして我々を襲っている。梅雨が明けてからは外気もわずかにカラッとしたような気がしなくもないけれど、それでも暑いことには変わりない。
くらくらするほどの熱気の中、私は店で初めてのイベントを開催したり、YouTubeに動画の投稿を始めてみたり、合間にワークショップの運営手伝いをしたり、主催する文芸誌の原稿をもりもり拝読したりしていた。
やけに働いた気になっていたが、こうして書き連ねてみると自分で作り自分で増やした仕事ばかりだ。あとはこれらの仕事のいずれかが、慎ましく暮らし続けられるだけのお金になればよいのだけれど……まあ、それは追々、いつか、そのうちに。
せめて気持ちだけはへこたれぬよう、むんと胸を張って水筒を抱える日々であります。お二人も、くれぐれもご自愛ください。
さて、そんな日々の中、唐突に編み物に目覚めている。
これは初めて編んだペンケース。愛用の万年筆と水性ペンは問題なく入ったものの、メタシルという短くならない鉛筆の頭が突き出すため、今はかぎ針入れになっている。
こっちは、その次に編んだスマホを入れるポシェット。色も形も上手くいったはずが、いざ使ったところ中に入れたスマホの重みで面白いほど肩紐が伸びた。
ただでさえ猛暑たる今、なぜ編み物に手を出したのか。きっかけは先述したYouTubeの動画投稿だ。
私も動画編集を始めるまで知らなかったのだけれど、動画というのは編集した後に「書き出し」という作業が発生する。編集時に追加した音楽やら効果音やらをまとめ、一つの動画データにするのだ。画像でいうところのレイヤー統合や、ラスタライズのようなイメージだろうか。
書き出し作業といっても私のやることはボタンを一度押すだけなのだが、大変なのはこの後だ。
私のパソコンはもともと、仕事と文章作成と……あとは同人誌の表紙を作ることにしか使わない想定で買い求めたものである。動画を編集して書き出して、なんてことをするには、たぶんスペックが少し足りないのだろう。
つまり何が起こるかというと、この「書き出し」ボタンを押した後、完了するまでにそれなりの時間がかかる。しかも“待ち”の最中に同じパソコンでちょっと調べものをしたり文字を打ったりしようものなら、たちまち書き出しに失敗するのである。
書き出し中に「何らかのエラー」が発生するたび、それなりの時間をかけて行っていた作業が振り出しに戻る。たかが10分のロスであろうとも、それが積み重なれば無駄になる時間は膨大だ。1時間は60分しかないのだから。
何度も失敗し、どうも書き出し中にパソコンを触るのがエラーの原因となるらしいと身体で理解し(このあたりで2時間ほどが虚空に消えていた)、パソコンから強制的に手を離す手段として選んだのが編み物というわけだ。
編み物はいい。一つの編み目を仕上げるためにかかる時間は数秒であるから、いつでも触れていつでも手を離せる。手をかけるたび確実に編地が増えていくから充実感がある。無心で編み上げることも可能だが、同時に、凝ろうと思えばいくらでも凝ることができる。
何よりうれしいのは、完成後もほどいて編みなおせることだ。編みなおせるから、知識や経験不足ゆえに出来上がってしまった少し使いづらい作品が山と積まれる……なんてことが起こらない。
そんなわけで、先に紹介したペンケース改めかぎ針ケースも、スマホポシェットも、これからほどいて編みなおす予定だ。また編める。うれしい! 楽しい!
仕事の合間に編み物をし、編み物の合間に仕事をして――「労働生産性」と「本末転倒」の間を綱渡りしている感が否めなくもないが、大人にだって、こういう無為を楽しむ夏があってもいい。
YouTube動画作成、お疲れ様です!
返信削除動画界隈、全然見てこなかったんだけど、身近な人が始めると、どれどれとそこから見てみたりするようになるのよね。(最近はインターネットラジオもそう)
編み物会やろうかってコメントを以前の日記で出した記憶がよみがえりました。テンションの上がるかわいい毛糸でも探しに行こうかな。