こんなところに素敵な場所があるじゃないか

 むらくもやま交換日記が始まって1年が経った。

おいしいものや楽しい時間を共有できる関係が続いていて、ありがたいかぎりである。


「白髪の道場破り」という日記を去年の7月28日に書いた。

初めて目についた自身の白髪について取り上げたのだが、

実はこの白髪、まだ私の前髪に居着いている。

目立つ日と目立たない日があるが、かき分ければそこにいる。

排水溝が毎日ホラー映画並みに抜け毛多いマンの私にとっては、1年ももつのは意外だった。

そして白髪の本数はそれ以上増えていない(ようだ、見える範囲では)。

下の毛にも1本白髪が生えた時期があって、こちらは私以外に見せる相手もいないのでアルビノちゃんとしてひとり目で愛でていたが、およそ10か月ほどで消えてしまった。


道場破りについては、相変わらず続けている。

今年の7月は三重に行く途中に立ち寄った名古屋のボードゲームバー店員と戦ってもらった(びりびりに破った)

9月は札幌で段位名人とお手合わせ願う手はずとなっている。

称号は女王ではなく魔王になった。

おばけキャッチのおかげで、初めての場所でも恐れなく飛び込むことができ(私にはおばけキャッチがあるからなという無駄な自信)、知り合いが増え、ボードゲーム界隈が以前よりも近しく感じられるようになった。

最近は初めてのゲームを遊べるのが楽しくて、いろいろやってみたいお年頃である。下手で負けまくってもいいんだ(私にはおばけキャッチがあるからなという無駄な自信)

11月にはボードゲームのイベントにも出店しようと考えている。

過去に戦った人に「イベント来てね」と宣伝するのは、なんか、めっためたに倒しておいてお前何言ってんだと思われない気もしないでもないが、しょうがない。

おばけキャッチの強い人を探しながら、おばけキャッチの楽しさを伝えられるよう励んでまいります。


……と、ここで終わろうと思ったのだが


神保町の話してもいいかなー?(いいよー)


7月の26・27・29日、ひじきは神保町の学士会館にいた。


学士会館とは何か。

実のところ、泊まるまでよく知らなかった。

すっごくいいから泊まろうよと言われて、付いて行っただけである。信頼の置けるKさんががそういうならすっごくいいのであろう。


学士会館は、宿泊、レストラン、会議室、結婚式場などを擁する学士会会員のための倶楽部施設である。1928(昭和3)に開業したクラシカルな建物は国の有形文化財に登録されている。

学士会とは旧帝国大学(現在の国立七大学)の親睦交流の集まりらしいのだが、縁もゆかりもない私のような一般利用も可能だ。


建物の老朽化・再開発を理由に今年の12月に休館が予定されている。


だから、今の姿の学士会館を訪れるなら今年が最後なのだと、建物マニアの学士会館好きの知人が言っていた。


学士会館に1つしかない3人部屋が運よく予約できたので、

KさんとMさんと仕事帰りに合流した。

「ミロンガ・ヌオーバ」という老舗の喫茶店で待ち合わせ、珈琲とケーキを楽しんで、最近買ってよかったものの話などに興じる。

私はワークマンの撥水加工ガウチョパンツと断熱材の入った強い日傘の話をした。


神保町は農文協の農業書センター(農業や食に関する本がたくさんある)に立ち寄ることがたまーにあるくらいで、頻繁には来ない。

でも、歩いてみれば古き良き喫茶店や専門古書店などが駅から密集して並んでいるのである。

ひじき絶対好きじゃん。ずっといられるじゃん。


酒屋で部屋飲みの用意をして、学士会館にチェックイン。


古いけれどぼろいわけではなく、暗すぎず、細部の意匠に凝った内装である。ステンドグラスも四角で構成された落ち着いたデザイン。





わーい、テンション上がる。

宿泊する3階には理事長室もあった。学園ものか。

3人部屋はでかいソファの応接コーナーと、奥ゆかしい衝立、3つ目のベッドが半個室のような空間に設置されている。

机にはトランジスタラジオ。


食事は館内で中華料理を食べた。

席の間がゆったりと開いて、料理は人数分に取り分けてくれる。

全部ちゃんと美味しい。もう都内の平日だということ忘れて、すっかり旅行に来た気分である。


腹ごなしに夜の散歩に出かける。

本屋は閉まっても、お酒を楽しむ喫茶店はけっこう遅くまで開いているのだ。

ただ、目当ての店は残念ながら満席だった。金曜の夜だものな。


部屋に戻り、浴衣姿になった後は、

むらくもやまでも遊んだ「りんごかるた」を体験してもらったり、「ワードバスケット」というボードゲームに興じる。

さも興じてくれと言わんばかりの座り心地のいいソファだ。深く沈む。

通常ルールだと慣れた我々ではすぐ勝負がついてしまうので、少しだけ難易度を上げて、3回先に勝った人が好きなベッドを選べることにした。

めちゃめちゃ接戦だったが、私が勝利し、屋根裏のような半個室ベッドを獲得した。


私はKさんと、Mさんとそれぞれ複数回のお泊り経験があるが、3人でのお泊りは初めてだったな。


翌朝、2人が腹の調子を悪くしていて、私だけぴんぴんしていたので驚く。

唯一口にしたものの違いは酒か?それとも私の腹が強靭すぎるのか?


11時のチェックアウトぎりぎりまで「カタカナーシ」で遊び、

学士会館に別れを告げる。


お昼は私の希望で「札幌スープカレー絲」にした。

神保町はカレーの街なので各タイプの有名なカレー店がたくさんあるが、今私はスープカレーブームですので。


その後、学士会館ファンの人に勧めてもらった「古瀬戸珈琲店」に行こうとしたら、今日に限って営業時間が1時間遅く、この灼熱の日差しの外で1時間は待てないなと諦め、昨晩振られた「眞踏珈琲店」に行くことにした。

ここはKさんが提案したのだが、奇遇にも、昨年12月に私も行ったことのある店であった。趣味が合いますな。

手作りフロランタンがおいしいのである。また食べることができて嬉しい。


この店は壁という壁の天井、階段にまで本の詰まった本棚が並んでいる。あなたにお好みの本を選びますというサービスがあり、3人それぞれ希望を伝えて1冊選んでもらった。


私は「奇妙な話、当然のように奇妙な展開になる話が読みたい」と伝えたところ、平山夢明の短編集『独白するユニバーサル横メルカトル』を勧められた。初めての作家だが、確かに奇妙でどんどん読んでしまう。


3人同じテーブルにいるのにひたすら読書する時間というのもいいものだ。


シェア型本屋パサージュを少し冷やかして、解散。


で、2日後の月曜日。


また職場から神保町に向かう。


すごろくやという吉祥寺にもあるボードゲーム屋をのぞき、

動植物の専門古書店「鳥海書房」でジャガイモに関する古い本を購入。独特のにおいがする大学図書館の地下書庫にも似た書物の山から見つけ出す自分だけの宝、たまらん。

先日行ったミロンガのすぐ近くにある古い喫茶店「ラドリオ」で、ウインナーコーヒーを頼んだ。こげ茶でちょっとほの暗いお店。


ここは日本で初めてウインナーコーヒーを提供した店なのだそうだ。

その知識は農文書センターの立ち読みで得た。

クリームもりもりや。


買ったばかりのジャガイモ本を愛でる。

昭和23年刊行で色あせた紙に「國」「學」そういう古い漢字での記載。読みにくいかと思いきや、フリードリヒ大王やパルマンティエなど知っている芋エピソードなので、読める、読めるぞ!


神保町仕草を満喫したあとは、また学士会館に向かった。

2日ぶり!


そして待ち合わせたのもKさんMさんである。

Mさんは2日前に私が紹介したワークマンのガウチョパンツを履いてきた。早い。


今日は期間限定で開かれているビアホールにやってきた。

なんでも、予約が殺到し、SNSでバズった効果なのか今は満員御礼なのだそうだ。

我々は宿泊したときに、フロントで聞いてみたらあっさり初日に予約できた。運がよかった。


ドラマ半沢直樹の撮影に使われたという重厚な広間。


ビュッフェ形式の食事に、自ら注げるビールサーバー。

ノンアルコールカクテルも各種ある。

ローストビーフとステーキは焼き立てを提供。


近くのテーブルには大正ロマンなお召し物の男女グループがいらっしゃって、眼福だった。

麻の白いジャケットに蝶ネクタイにカンカン帽の男性と、モガなボブの髪型にワンピースで丸っこい帽子の女性。眼鏡はもちろん丸眼鏡。

そうよね、こういう建物にはそういう格好がめちゃめちゃ似合うわよね。食後に写真撮影をしあったりして、楽しそう。


ありがたみもよくわかっていないにわかにもほどがあるが、そんな感じで非日常空間を味わったのだった。

コメント

  1. 学士会館の中、こうなってるんですね! お写真見るだに、文字で読むだにすてきだなあ。この三人でも古本屋めぐりがしてみたくなりました。

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