大人への調律

まだまだやんちゃ盛りの三十代、みなさまいかがお過ごしですか。

かくいう私は三十代も後半、それなりの変化は感じつつまだまだといえばまだまだ。妻でも母でもない個人としての自意識が強いためか、落ち着きとはほど遠い。先日の文学フリマでは、金髪に開襟柄シャツという出で立ちで臨み、名札なしでもたいがいの方に認識していただけたのが実はちょっと嬉しかった。

普段の仕事も同様の装い、ほぼTシャツとデニムで過ごしているので毎日の服選びのなんと気楽なこと。

いつも通りであれば。

仕事の都合で、今月は人前に出る機会が大変に多い。さすがにTシャツデニムというわけにもいかない。その第一弾だった昨日は、あったあったとプリーツが入ったお気に入りのブラウスを引きずり出してきて慌ててアイロンをかけたが、次も同じものを着ていくわけにはいかない。

困った、着るものがない。

思いっきりラフか思いっきりお出かけ着か、どちらかしかないのだ。気張りすぎず、ほどよくきちんと感のある、その上でそれなりに動ける装い、いわゆるオフィスカジュアル的なワードローブとは無縁の人生を送ってきたので引き出しも少ない。っていうかほぼ皆無じゃないか。美容室のタブレットでめくる雑誌もオズマガジンとか散歩の達人ばっかりだぞ。

今日のむらくもやまご飯会ではそんな悩みともいえない悩みを吐露しつつ、おしゃれでおいしくて個性的なランチを楽しんだ。

約一年前、桃パフェフィーバーに阻まれて訪問を断念した西荻窪の「Typica」で、なすやじゃがいものアイスをふくむパフェが提供されるという。このへんのアンテナの高さ、情報の早さはさすがのひじきさんで、ばばばばと連絡を取り合って決まった日取りが今日だったのだ。

噂に聞く前菜のパフェ、紫芋のチップにじゃがいもや焼きナスのアイスクリーム。いずれも、ちゃんと野菜の風味がしてさっぱりした甘さ。おいしいおだしの銀餡と、ぷちぷちした蕎麦の実のサラダ、そばのブランマンジェ、多分クリームチーズベースのしいたけクリームによるもっちりした濃厚さのあとに、しゃきしゃきと爽やかな茗荷のソース。

夏の訪れの味がする…!

おもては紫陽花が競い合うようにボリュームと鮮やかさを増す頃合い、ちょっと蒸し蒸ししはじめた今の季節にぴったり、かつすでに満足感が高い。

うまいすごいうまいと口々に感動を言い交わし、続いて季節のカレー。ほうれん草サグカレーはなんだか豊かな香りをふくふくと湛えた食感の楽しいひと皿で、スパイスもかみごたえもぷちぷちポリポリも盛り沢山なのに、全体がさらりとしてぺろりと平らげてしまった。

ハンドドリップのコーヒーもまた、香りが楽しかったねえ。




その後は雨降りの高架下を吉祥寺までぽちぽち歩き、ボードゲームカフェに落ち着くなりボブやマイケルやデイブと戯れ、ナンジャモンジャで悶絶し、さらに世に出たばかりのりんごかるたまで体験させてもらった。
やまおり亭さんのいつでもちゃんと物事を組み立てていくところとか、ひじきさんのボドゲホスト力とりんごトーク時のドヤ具合とか、ゲームを通じて「似ているようでまるで違う私達」が浮き彫りになってとても楽しい。
それにしてもりんごかるた、奥が深すぎないか。読み札を読み上げてパシーン!ってやるだけだと思ってたよ。こんなに遊び手を育成しようとする仕掛けに満ちた遊びだとは。

仕組まれた沼の気配しかしないよ。
そしてまじで着々と品種を覚えていってるやまおりさん…置いて行かないで…。

その後、ひじきさんはりんごかるたを携えて別の集いに旅立っていった。今日はいったいどれだけの人がりんごを楽しみりんごに悩まされたのだろう。

さて、ここで服の話に戻る。

なんとか手持ちの「きちんと感のある服」を増やさねばならないので、二人とわかれたあとに駅ビルに頼った。めぼしいショップをすべて回り、最終的にはかんじのいいブラウスを2着、なかなかお手頃に手に入れられたのだが、いやあ難しかった。

なにせ普段柄シャツを着ている身である。
なんなら今、髪の色が暗い青なのだ。
似合う服があまりにも限られている。
ふんわりしたフリル、やわらかなギャザー、淡い色合い、いずれも今の私にはコスプレ感が強すぎる。ここで思い浮かべるのはさきほど食べた前菜パフェとカレーのことだ。

「おしゃれで、おいしくて、個性的」

おいしい、はまあ別のなにかに読み替えるとして、私はそういうカッコがしたいのだ。なりたいものになりたい、それはたとえきちんとした大人に擬態するときでも手放したくはない。いや、髪色が青な時点で擬態する気ないだろと言われればそのとおりなのだが。

青い髪と喧嘩せず、ふわふわ系よりはソリッドな印象で、手持ちの服とも合う。この条件で、マントみたいな肩布のついたノースリーブ(あれが袖なのか?)と、幾何学っぽいレースの襟付きブラウスを選ぶに至った。どちらも色は黒。人前に出るとは言え、あくまで運営側は脇役なので華やかにする必要はないのだ。

久しぶりに社会を意識して服を選んで、すこしだけ年相応へのピントが合った気がする。人並みからずれていくのも面白いんだけど、人並みが何であるかはわかってたほうがよいなあ、などと思ってみたり。

いただいたじゃがいものこととか、正直まだまだ書き残したいことはあるんだが。
なんだか、普段あえて眠らせているいくつもの回路が一気に開いたような豊かな一日であった。

コメント

  1. 3人の集会をまとめてくれて、ありがとうございます。
    パフェその他もろもろ、おもしろおいしかったですねぇ。
    ボードゲームもできて楽しかったです。おいやでなければ、またぜひ新しいゲームも遊びましょう!

    条件に合った洋服が見つかって何より!
    擬態の時もどこかに自分らしさは手放したくないのわかるなー。基準がこれなのは知ってるけど、私はここに着地するみたいな調整力、必要ですね。

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  2. 美味しい集いでしたね! 青い髪と喧嘩しないオフィスカジュアルを見出せるのはもはや才能では……と思いつつ、オフィス一辺倒に染まり切らないのが草群さんらしいなと思ったり。白黒つけないと決めた大人の凛とした姿、憧れます。

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