浮き足立つ

というのは本来、ネガティブなそわつきにのみ使用する語であるそうな。不安だとか、恐怖であるとか……浅学ながらつい先日知り、うきうきソワソワという意で使ってしまった過去のあの小説やそのエッセイが脳内を駆け巡った。幾つになっても、こまめに辞書を引くことが大切だなあと身に沁みたのでした。

そんな出来事に浮き足立ちつつ、月に一度の「吉祥寺 ハモニカ横丁中央通り朝市」に今月も出店し、招文堂でお預かりしている文芸同人誌を販売してきた。

十二月、一月、二月と月を追うごと寒さが増していた朝市であったけれど、今月はようやく、ほんの少しだけ陽射しの暖かさを感じられたように思う。そういえば東京の桜の開花は今月の20日頃であるというし、今朝は特に日当たりのよい御宅の庭で、コブシらしき大きな白い蕾がぶわりと膨らんでいるのを発見した。三寒四温とはいいながら、春は着実に近づいているようだ。

朝市ではひじきさん/草群さんと待ち合わせて、ひじきさんから原稿合宿のお土産を頂いた。いつもありがとうございます。

こういうときに招文堂を待ち合わせ場所にしてもらえるのは、嬉しくも面映ゆい。おっかなびっくり始めた店が、ようやく「いつもあるもの」として形を得始めたような気持ちになるのだ。「町の中でいつでも文芸同人誌が買える場所」を作りたいとの思いで始めた店であるから、なおさらなのである。

朝市の後はスモールノジッケン(招文堂が入居している施設)へ向かい、持ち出していた同人誌たちを店の本棚に戻した。ひと仕事終え、帰宅の道中にパン屋を覗く。本当はバタールを買うつもりでいたのだけれど、私が店に着くと同時にパリジャンが焼き上がったがために初心を曲げてしまった。パリジャンはバタールより二回りほど大きなフランスパンである。きっと今夜のうちには食べきれず冷凍することになるだろう。でも焼き立てパンに勝るものはないからね。仕方がないね。

帰宅後は、朝から仕込んでいた鶏ハムをカットして冷蔵庫に仕舞う。鶏むね肉の茹で汁はあっさり美味しいスープの素になるので、これも大事にとっておく。キャベツを入れて煮込むと格別に美味しい。

あとはブロッコリーを電子レンジでチンして、ベビーチーズなど添えれば、白ワインに合うおつまみセットの完成だ。今宵は前々から白ワインで乾杯すると決めていた。そのためのパリジャン、そのための鶏ハム。そして、であるがための、取り留めもなくそわついた今日の日記なのであった。

春の夜はまだ寒い。桜の季節がもう少しだけこちらに歩み寄ってくれた折には、出しっぱなしの炬燵を抜け出して、夜の公園で小さな酒宴をひらくこともできるようになるだろうが……それはまたのお楽しみに。

コメント

  1. 朝市いつもお疲れ様です!
    自分にとってもそこに行けば「ああ、ひじきさん」と親しい人がいるような「いつもあるもの」ができるのはすごく嬉しいんですよ。
    丁寧な暮らしに見せかけて晩酌に励むのが、やまおり亭さんらしい。

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