ごちそうのいいわけ
年末だ。
会食の予定が続く。とはいえ近頃の私の交友関係はずいぶんと絞られて、職場か実家か創作仲間、というかもっぱらむらくもやまメンバー。みんな、私のペース、行動パターンを面倒がらずに付き合ってくれる人たちだ。大変に甘えさせてもらっている。いかんいかんと思いつつ、つい……。いつもありがとうございます。
さて。昨日はむらくもやま忘年会であった。
とても、とても楽しみにしていた。メンバーは最高だし、お店も最高だし。
たくさんおしゃべりしたいし存分に飲み食いするつもりでいたのだが、しかし例によって平日の仕事が思ったより詰まってしまい、さらに月イチもっともしんどい日に当たってしまったので、家を出るのにかなりのパワーを必要とした。
まあ、そんなのは楽しい時間とおいしいごはんの前に吹っ飛びましたね!
お魚と日本酒の天国「魚や藤海」は秋葉原駅からちょっと歩いて電気街の喧騒が落ち着いたあたりにある、大変楽しく美味しいお店だ。詳しくは以前ひじきさんが天蛙のときに書いてくれているから割愛するが、今回も最高であった。
冬といえば鍋、ということで「どうする? 鍋頼む?」というところからメニューの相談ははじまる。実は私、鍋をつつくのがあまり得意でない。煮え具合をみつつみんなで取り分けるうちに一体どれくらい食べたかわからなくなるのと、うっかりすると食べどきを通り越してしまったりして、なんだかペースが乱されるから苦手なんだと思う。食べ物としての鍋料理はもちろん好きなんだけど、あれかな、食卓に出すときには完成しててほしいのかもな。同様の理由で、実は焼肉もあまり得意ではない。でもお好み焼きはそれほど苦手に感じないな。焦がすことはそうそうないし、分け合いやすいし。うむ、なんとなく自分の面倒くさい部分がわかってきたぞ。
というわけで、今回はアラカルトにしてもらった。寒鰤の生ハムを食べ、刺盛りを食べ、ベーコンたっぷりのポテサラを食べ、もちろんポテトフライも食べ、勧められるままにあん肝に白子、北寄貝はバター焼き。身を食べたあと、立派な貝殻のなかで貝のお出汁とバターが合わさって奇跡の液体と化していたため、ポテトフライをリピートして浸して食べた。
今日も元気な女将が出してくれた噂のお酒「天蛙」は瓶のなかの酵母まで抜群の活きのよさで、あまりに泡が上がってくるものだから開栓にしばし時間を要した。その間に私とやまおりさんはすいすいと杯を干し、ひじきさんは少しずつ舐めて、個性豊かなお酒を楽しんだ。
そして待ちに待った天蛙。滅多にお目にかかれないとのことでありがたく頂いたが、本当に飲みやすい。やわらかな酸味を含んだ甘さ、細かに立つ泡が大変軽やかで、これを甘露と呼ばずしてなんとしようか。あまがえるという名前に引っ張られている気もするが、草生い茂る日本の水辺が似合うお酒だなあと感じた。しっとりと朝露に濡れた原っぱでもいい。
さあ次は何を飲む、と問われて「ツンデレなお酒が呑みたい!」と挙手したのは誰あろう私である。ふんわりと甘いお酒が続いたのできりっと辛口をいただきたいが、あまり口当たりが強いのはちょっと、と思って咄嗟に口走ったのだが、「それなら色素の薄い美少年みたいなイメージのお酒がある」と即レスしてくれるあたりが女将のすごいところである。
「な、なんですって?!」と大興奮の私にやまおりさんが若干引いていた気がするが、すまん、これが本性なんだ……。
美少年はたいへん爽やかなよい香りがしました(語弊)。
うまいうまいと食べながら一年を振り返る。一緒に行ったごはんのこと、各々の作品のこと、創作のベースにある生活のこと、ついついはさんでしまう私の仕事話にもうんうんと付き合ってくれて、むらくもやま日記本の今後についても軽く展望を話しつつ、最後はやっぱり食べ物の話に戻ってくる。
締めにいただいたおにぎりとあら汁のまあ美味しいこと、そしてブリュレのぱりぱりをカツンと割るのも忘れない。18時にお店に入ったのに気がついたら時計は23時を指していて、どうりでお腹がいっぱいなわけだと目を丸くした。
お店を出る前に日本酒のずらりとならんだ冷蔵庫をしげしげと観察して、「よい箔だ……」と溜息を漏らすあたりが我ら同人戦士である。
そういえば、周りのお客さんの話も聞いてて面白かったな―。場所柄だ。
まだ今年は一週間あるが、大変楽しい年納めになった。
来年は、今年甘えさせてもらったぶんを返せる年にしたいなあ。
今年も本当にありがとうございました。これからも仲良くしてね。
そして翌日の今日。
世間はクリスマスイブだし投票にも行かねば、ということでお昼すぎにのっそり活動を開始した。
ひじきさんに「明日はケーキとか食べるんです?」と訊かれてその気になったのでケーキを買って帰るつもりだったのだが、駅ビルの床に敷かれた矢印と長蛇の列を目の当たりにして心が折れた。ので、そのぶんをちょっと贅沢しようとランチに繰り出したのである。
先日行ったシフク食堂は案の定並んでいて、どうしようかと近くをぶらついていたら新しいお店ができていた。
TORETATE petit。なんだか見るからに野菜の美味しい気配がする。中を覗いてみたら落ち着いたかんじのおじさまが給仕をしているのが見えたので、直感を信じて扉を開いた。
いや、大正解でした。
お皿いっぱいの前菜にころっとふかふかのパン、ほうれん草のポタージュにパスタは4種類から選べて、もちろん飲み物もついている。私はワタリガニと九条ネギ、カラスミのパスタを選び、食後にキャロットケーキをつけてもらった。サラダの葉っぱが長くて上手に食べられなかった(草を食むヤギみたいになった)こと以外はすみずみまで素晴らしくて、お店のひとのかんじもとても好きだった。ランチにしては遅い時間だったからか店内は落ち着いていて、最後のひとくちまでゆっくり楽しむことができた。キャロットケーキにかかってたゆるい生クリームもきれいに食べちゃったもんね。クリームはホイップよりもあれくらいが好き。
忘年会だクリスマスだと理由をつけたごちそうが続いたので、夜はちょっとレンチンした里芋に「コツの要らない唐揚げ粉」をまぶして揚げたものをパーティーっぽくして食べました。
里芋の唐揚げ、おいしいよ。じゃがと比べるとしっとりして、お腹にガスが溜まりにくい気がする。
おすすめです。
おふたりに天蛙飲んでもらえてよかったな〜。
返信削除TORETATE petit、気になってたのよ(正確にはその前に入ってた店から気になってたら変わってしまって余計に)野菜、嬉しいよね。今度行ってみます。
引いてないよ!笑 普段は快活ながらも大人の落ち着きをもつ草群さんが、雪を初めて見た柴犬の赤ちゃんみたいな顔になっちゃった瞬間にはびっくりしたけど……TORETATE petit、私も気になってたんですよね。おいしそうなお写真にニコニコです。
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