とろりおいしい

もつ鍋の季節だ。

数日前、パートナーが出先の八百屋さんで大量のニラと、たいそう立派なキャベツを一玉買ってきてくれた。そして一昨日の夜、近所のスーパーでガツ(豚の胃袋)を買った。

ガツを自宅で調理するのは初めてだったので調べたところ、火を通すとかなり歯ごたえが出てモチモチになるらしい。ので、これって大丈夫なのかしらと思うくらい細かく刻んだ。ついでに安売りしていた牛タンの塊も細かくして、一緒くたに下茹でした。

宴は昨夜。祝日の前祝いだ。下茹でしておいた肉類の鍋に、大量のキャベツを投入し、煮込む。味付けはスタンダードな味噌か、周囲ではあまり聞かない塩かで迷ったけれど、まずは薄めの塩でいくことに。これなら後からいくらでも調整がきく。キャベツがくたりとするまで煮て、最後に生のニラを追加して一瞬だけ火を通したら完成だ。

鍋と言いつつ煮込み料理のようになったので、小鉢に盛りつける。この小鉢はつい先日、近所の小さな居酒屋さんの前に「ご自由にお持ちください」の張り紙とともに並べられていたものだ。ちょっと早めの大掃除でもしたのだろうか――こっくりとした濃い茶色のうつわに、焦げ茶色の釉がとろりとかかっていて、この小鉢に入れるだけであらゆるものが〈お店のちょっといい突き出し〉の様相を呈す。さすがは居酒屋さんの食器だなあ、と、使う度に感心してしまう。

肝心のもつ鍋(のような煮込み)は塩だとやはり少しだけ味気なく、小鉢のヘリに赤味噌を擦りつけて、そいつを舐めつつ食べた。ガツも牛タンも脂の少ない部位なので、肉が二種類も入っているのにさっぱりと美味しい。

もつ煮込みといえば味噌風味であることが多いように思うが、それにはしっかりと理由があるのだろう。なんせ味噌は塩よりも焼酎のソーダ割が進む。味が濃く、風味も強くあるのがいいのだ。

最後は味噌を煮汁に溶かし、七味も入れて、なんちゃって味噌汁にして締めた。

そういう祝日前夜を過ごした翌日。今日の昼は昨日のもつ煮込みの汁をちょっと取り、出汁で薄めて醤油で整え、温かいそうめんを入れて食べた。

温かいそうめんを食べながら、ふと、迫りくる年末のことを思う。ゴミ収集業者さんが仕事納めしてしまう前に大掃除をしなくてはいけないし、久々に東京で過ごす年末年始に何を食べるか考えなくてはいけないし、そういえば家庭用プリンターを今年こそ買うぞと決心していたのに今年がそろそろ終わってしまいそうだし……。こんなことを考えるのは、温かいそうめんが私にとっての「お腹にやさしい栄養飯」だからだろうか。年末はいつも、なんやかんやと忙しない。今年もちょっぴり体調がぐらついた日には、こいつのお世話になるつもりだ。

それにしても、温かい食事が続くと秋の深まりを肌で感じる。今夜も、もつ煮込みの残りをもう一度煮込んだものを食べるだろう。きっと昨夜に輪をかけて、とろとろになっているはずだ。

コメント

  1. ふふ、出ました!やまおり亭さんのおいしそうなご飯描写。鍋に入れるそうめん、やさしくていいですよねぇ。

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