暴力、爆発、ナイス音ハメ

 かれこれ三〇分ほどキーボードの前で途方にくれている。ので、先月観たおもしろい映画のことでも書こうと思う。ネタバレはないです。

 ジョン・ウィックという映画をご存知だろうか。
 2014年から続くシリーズもので、2023年9月、シリーズ四作目となる『ジョン・ウィック:コンセクエンス』にて、見事完結と相成った。

 映画『ジョン・ウィック』はこう始まる。
 ジョン・ウィックという伝説の殺し屋が最愛のパートナーを得た。パートナーを愛する彼は殺し屋業を退いたのだが、不幸にもそのパートナーが亡くなってしまう。ジョンは孤独に静かに暮らしていたのだけれど、ある日、パートナーの遺してくれた犬をマフィアに殺されてしまい……ジョンは復讐のため、殺し屋業への復帰を決意する――あらすじで察せられるかと思うが、悲しいことに映画の冒頭で犬が亡くなってしまう。あと人間もたくさん葬られる。

 さて。はばかりながら、私は「暴力、爆発、ナイス音ハメ」な映画が大好きだ。〈復讐〉をストーリーの根幹に置く『ジョン・ウィック』シリーズだが、その大部分は煌びやかな暴力で占められている。すばらしい音楽とともに、リズミカルに繰り出される暴力のなんと魅力的なことだろう。私は『ジョン・ウィック』シリーズを、うつくしい暴力を浴びるほど鑑賞できる映画として楽しんでいた。

 しかし完結編、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』で、私はこのシリーズへの感想を一新させられることになった。いやあ、様々な面ではちゃめちゃに巧みだな~!?

 私は映画館で公開初日に観たのだが、まず導入部分の配慮がよい。全映画館で行われていることなのかどうかはわからないが、少なくともTOHOシネマズでは、本編開始の直前にごく短い「これまでのあらすじ」動画が流れた。シリーズものの映画は、知人にぜひ観てもらいたいと思っても、最新作より前の部分をチェックさせるのが申し訳なくてお誘いを躊躇してしまうことがしばしばある。しかしジョン・ウィックなら大丈夫だ。安心して、初見さんを映画館にお誘いすることができる。

 そして、これまで以上に絵がうつくしい。思わずみとれる絵的な……画角的な? うつくしさが各所にちりばめられている。私のおすすめは俄然パリだが、くるくると舞台がかわってゆくため、だれしもが、どこかできっと気に入る絵に出会えるだろうと思う。そう、日本のオオサカも舞台になっている。

 このオオサカがまたよかった。海外制作の映画で「ジャパン」「オオサカ」といえばネオンがやけに青いネオ・トーキョー、ネオ・カブキチョーが大半であるため、私も最初は「どんなハッピーなネオ・オオサカを見せてくれるのかな?」とトンチキ部分を少し期待していた。のだけれど、実際に観てみると、これがもう、とんでもないリアリティを備えたフィクショナル・バイオレンス・オオサカを作り上げてくれていた。ちゃんと日本な上で、フィクションの街を構築している。日本の解像度が高い。必見です。

 そして何よりよかったのがストーリー構成と台詞だった。今回のサブタイトルであるコンセクエンスとは、日本語で「報い」を意味する。映画のサブタイトルは気持ちを盛り上げるためのお飾りであることも少なくないが、ジョン・ウィックにおいては、このサブタイトルを最初から最後までキッチリとストーリー、そして台詞に反映させてくれていた。それがよかった。お話を作るものとして、タイトルの扱いについて考えさせられる映画だった。

 そんな……かんじで……ネタバレなしと最初に書いてしまったせいでなんだかふわっとした感想になってしまったけれど……ジョン・ウィック、おもしろいのでおすすめです。暴力が大丈夫そうだったらぜひ観てみてね。主演はキアヌ・リーブスです。

コメント

  1. ジョン・ウィックがシリーズものだと初めて知りました。
    はーやまおり亭さんが紹介すると見たくなっちゃうんだよなあ、暴力の映画と聞いたらなおさら(ひじきのよく見る暴力は仁義がない感じの奴です)

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  2. お噂はかねがねのジョン・ウィック、一度観てみたいと思ってたのよ…劇場行けばよかったなあ。あの手のアクションは、ストーリーもさることながら映像が小気味よいからどっちかっていうと「体験型」よね。ネタバレ気にならない。というわけでおすすめありがとうございますー。

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