明るい声のあるところ
日付が二日飛んでいるところから察してほしいが、大変に忙しい。
大きな案件のカバーと、各々が担当する案件がそれぞれ複数、それから欠員に伴う事務作業の振り分けと引き継ぎで所属部署はフル稼働、というよりはオーバーワーク気味である。
私は九月一日をもって社員に昇格したばかり、企画進行に至っては今抱えているのが初めての案件である。ついこの間まで対外的なメールは上司のチェック後に送信していたのだが、それも自己判断で卒業した。納期も会期も刻々と迫っており、悠長なことを言ってられないのとチェックに割くリソースもすでに底を突いたと察したからだ。
顔を合わせないでも仕事はできるが、こういうときに取引先の担当者の顔がわかっている、なんとなく人柄が見えるというのは大きい。なにか誤っても互いにフォローし合えるからだ。信頼関係という名の緩衝地帯、このささやかな赦しが、軋みながら回り続ける車輪の動きをいくらか滑らかにしてくれる。
それにしても、いろいろとぎりぎりなのが本当に怖い。私はスケジュール管理と時間を守る類のタスクが壊滅的に苦手なのだ。生来の図太さが私をここまで生かしてきたとも言えるが、この「まあいっか」の精神がいずれ身を滅ぼす気がしてならない。
平均台の上をチャリで爆走しているイメージとともに、ひとまずあと二週間ほどば踏ん張らねばならぬ。
おお怖。
忙しいのは社内だけでなく、いろいろと依頼している取引先も同様で、急ぎの用件で電話することが格段に増えた。お互いぎちぎちの状態なのを理解しつつなんとか無理を通して、申し訳なさと労いの気持ちでやり取りする。
疲れの色は濃いものの、電話口の声は明るい。感じよく、失礼のないように、少しでも相手の励みになるように。元気な声を聞くと、こちらももう少し頑張ってみようと思えるものだ。これが本当にありがたい。
頑張りすぎはよくないが、踏ん張りどきというのはままある。その間、どうやって乗り切るか。愚痴を言い合って溜飲を下げるのも結構だが、私にはどうも向かない。文句言ってる暇があったらとっとと片付けて休みたいし、どうすれば次回こんなに追い込まれずに済むかという話をしたい。そういう意味では一匹狼的な気質も強く、本当に群れることが苦手だと感じるのだが直属の上司も同様の手合い(しかも私よりもだいぶ物言いが強い)ので実はけっこうやりやすい。敵は多そうだが頼りになるのだ。
体力的にはだいぶきつい。新人らしくゆっくり落ち着いて教えてもらえる日はもう来ないだろう。それでも自分の出した企画内容が実現していくのは嬉しいし、作家から上がってきた素材を初めて目にする瞬間、サンプルが出来上がったり、展示が組み上がったり、作家やお客さんが喜んでいるのを目の当たりにするとやっぱり嬉しいもので、そういう小さな元気玉が仕事中にちらちら目に入るようにしている。ひとりでフッとニヤついたり、同僚とひとしきり騒いだりして、もう一踏ん張りするのである。
明るい声のあるところはしなやかに強い。せめてその明るさの中心でありたいと願う。
踏ん張り時ですねぇ。大変な時でも明るい方へ、前へと走っている草群さんにリンゴを持たせることしかできませんが、ここを乗り越えた草群さんはまた一回り強くしなやかになっていることでしょう。
返信削除大変なお忙しさであるようだけど、お忙しい最中の草群さんって、どうにも輝いておられるから不思議です。どうぞお身体だけは大切に。明るくがんばる草群さんを応援してます!
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