私が作りました

 頭髪を切り揃えた。

表参道のおされヘアサロンでカリスマ美容師にカラーとパーマとトリートメントを……みたいなことを書けないのは、私が普段行くのが美容院とすらいえない駅前の1000円カットだからである。いや、時世の反映でもう1000円では切れないのだがXをTwitterと呼ぶようにいまだ1000円カットと言ってしまう。

そういえば「カリスマ美容師」ももう死んでしまった言葉なのかもしれない、そのくらい縁がない。

前髪を眉毛が出るまで短く、他の毛先は2㎝ほど揃えてもらうのが常である。

私は平均より髪の毛の伸びが良いようである。1か月に1㎝とよく聞くペースはお構いなしに、2ヶ月で前髪は目に入るようになり、鬱陶しくて4㎝くらいパツンとすることになる。毛が伸びるのが早い人はスケベなどと昔聞いたことがあるが、おそらく栄養状態がいいのだ、そう信じて疑わない。

1000円カットは、店員が毎回のように違うし、滞在時間は必要最低限で、切り手と世間話を続ける気苦労がない。髪型に強いこだわりがないので、店は変えつつもこの業態を利用してもう十数年になるだろうか。

髪型については、このところ約3年周期でおかっぱとロングの間を行ったり来たりしている。

それというのも30㎝伸びたところで、ヘアドネーションすることにしているのだ。

ヘアドネーションとは髪の毛を医療用ウィッグの素材として寄付するボランティアのこと。小児がんや白血病などの病気、不慮の事故等で髪の毛を失った子どもたちのかつらになるのだそうだ。これまで3回寄付をした。

寄付のための断髪時は、団体の賛同サロンに行くことになる。

その時ばかりはシャンプーもカットもブローもマッサージまで丁寧にしてもらえて「美容院に来ている!!おかゆいところはございませんかだ!」とたまの贅沢を味わっている。

断髪に選んだ店が、平日夜遅くもやっていてコスプレイヤーなども通うオタクフレンドリーな美容院なのだが、自分がアニメゲームにまったく興味関心がないために会話がつながらなくて肩身の狭い思いをした1回目、アニメゲームでなくても「好きなもの」について話せばわかり手として聞いてくれるのだと気づいたのが2回目、3回目の去年はジャガイモとフィナンシェとリンゴを前面に押し出して語ったら、美容師の推しにかするところがあったらしく、やたら盛り上がってSNSをフォローし合った。3年に1度しか行かないので覚えられてはいないだろうが、次回はどうなるかちょっと楽しみである。

前の日記の献血といい今回のヘアドネーションといい、なんだか立派なことをしているように思えるかもしれないが、私の場合は「体という畑での収穫」を楽しんでいるのだ。2週間に1回摘まめる作物「血しょう」「血小板」と、3年くらいで刈り取れる作物「髪の毛」それが役に立つなら喜んで出荷する。それだけだ(生産者の顔)


コメント

  1. 「体という畑での収穫」、抽象的な表現なのに、それを楽しむひじきさんが目に浮かびました! 髪の毛の伸びは「夜型の人は早い」とも聞いたことがあります。真偽のほどは不明ですが…。

    返信削除
  2. 生産者POPを作りたいですね。それを髪の束や血液パックに貼ってだな……。

    返信削除

コメントを投稿