針痕のある腕

 献血に行ってきた。103回目である。

記念すべき100回目のときは、正装しなくてはと「献血大好き」と血文字で書かれ採血されるイラストのついたTシャツを着ていった。ワクチン接種の時に話題となった「注射こわい」Tシャツがわかる人は、それとほぼ同デザインを思い浮かべてもらいたい。献血ルームに行く前に立ち寄った朝市でやまおり亭さんに「そのTシャツは」と挨拶もそこそこに突っ込まれたことを覚えている。

話がそれるが、草群さんにも別のTシャツで会って早々「Tシャツ、ハダカデバネズミですね!」と気づいてもらえたことがあったので、ひじきの服の趣味は推して図るべしである。

さて、献血。

大学生の時分、通っていた時期があり節目の記念グラスはいくつかもらっていたが、社会人になると平日昼間は難しく、土日は外出が多いことや服薬を始めたこともあってしばらくご無沙汰だった。しかし、2019年にふと思い立って調べてもらったら献血には問題がない薬だったこと、2020年からはコロナ禍で誰とも遊べない状況になり献血に行くくらいしか予定がなくなったため、ほぼ2週間に1回のペースで通うことにした。立派な志はかけらもない偽善的なただの趣味なのだけれど。

100回以上も経験して、顔なじみとなったスタッフからは「いつもありがとうございます」と言われるのだから、さぞ優良な提供者だと思われるかもしれない。

しかし、400ml献血は基準に満たないので成分献血しかできないし、需要の多い渇望される血液型でもないし、けっこうな確率でスタッフの手を余計に煩わせてしまうこともある。その手間をかける原因が「血圧」である。

私は(今のところ)低血圧のようだ。上はたいてい90台、健康診断の日など、朝食を食べさせてもらえないせいで70台しか上がらずD判定食らう(理不尽)ただし寝起きはよく、パッと目が覚めて爽やかに会話をし、すぐにご飯が食べられるので朝に困ることはない。意識するのは献血の時くらいだ。

まず、献血は血圧が上90以上、下50以上ないと実施することができない。事前検査の段階で90届かずに帰されるということも過去にはあったが、これは行く前にしっかりカロリーを摂取する、測定中にむかつくことを思い出してプリプリするという対策によって改善された。

めでたく検査が通り、専用リクライニングベッドで採血となっても、採血後の血圧が上90以上ないとベッドから待合室に帰してもらえない。これも決まりである。いくら血しょう・血小板だけを採取して血液は体に戻すといっても、献血後の血圧は下がる。元が100だった人が90に下がるならセーフだが、90だった人は下がると80でしょう?3分休憩で戻れるはずが「もうしばらくしたらまた計りますからね」と10分ほど放置される。スポーツドリンクを飲まされ、足の運動を強要される。それでも上がらないと、お菓子とあたたかい飲み物がお盆に載って運ばれてくる。入院患者の様相である。だいたいはお菓子のカロリーで上がるが、うっかりリラックスしちゃってプリプリを忘れ2回計ってもだめだと水分が足りないのだとさらに飲まされる。採血前も採血中も飲め飲めと飲まされているのだ。水分と放置が繰り返され、血圧よりも膀胱に圧がかかる。

血圧が足りないまま尿意を我慢できなくなるとどうなるか。1度体験したことがある。いや、漏らしてないよ?「トイレ行きたいんですけど」と言ってみたらどうなるか。

車椅子でトイレまで運ばれるのだ。スタッフルームを横切り、バックヤードツアーの様相である。当然ドアの前で出待ちされ、また車椅子でベッドへ帰還する。いや、あれは本当に申し訳なかったので、以来ベッドで血圧を計る時はハリーポッターの組み分け帽子「スリザリンは嫌だスリザリンは嫌だ」よろしく、「車椅子トイレは嫌だ車椅子トイレは嫌だ」と脳内で唱えている。

コメント

  1. 車椅子トイレの話、初耳でした。それで懲りて献血をやめないあたり、さすが「献血大好き」だ…!

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  2. ハダカデバネズミTは突っ込まずにはいられませんでした!
    ところで私、血の気だけは多いので全血400ml提供しまくってたら次に献血できるの12月になってしまいました(成分献血は別)。悔しい……!

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