うかうかしてたら
あっという間に今年が終わってしまいそうだ。むらくもやま忘年会で過ごした楽しい時間も、幸運にも口にできた天蛙の味わいも、つい昨日のことのように思い出せるというのに……。
そんな残り少ない年末のお休みを使って、お芝居を観てきた。今年最後の、電車に乗ってのおでかけである。
観たのはこちら。
花組芝居『泉鏡花の夜叉ケ池』
https://hanagumi.ne.jp/reki/0/2309151200.html
花組芝居は〈ネオかぶき〉をコンセプトに掲げる劇団で、和洋どんな演目も、どこか目新しいかぶき仕立てにして上演してくれる。
しかも今回は、この劇団が普段から使っている稽古場に舞台を設えての公演だというのだ。年末らしい特別感がうれしい。
台詞は原文ママだと聞いていたので、事前に青空文庫で軽く予習をしてから向かった。予習は正解だったが、尺に合わせて調整されているエピソードなどもあったので、ぶっつけ本番で観に行ってもそれはそれで楽しめるように思う。
芝居が始まれば、風のように過ぎ去った約二時間。猥雑さと格調高さが混在し不思議と煌びやかで、見終わったあと妙に目が爛々とするお芝居であった。
千秋楽は明日。当日券も出るとかでないとか? いずれにせよ、きっと大入りとなるであろう。
それにしても、戯曲の言葉というのは面白い。小説やエッセイとはまた違った、耳で聞いた時の心地よさに大きく舵を切った言葉たちからしか出てこない、独特の滋味のようなものがある。私自身は小説やエッセイを脳内で音読しながら読むタイプなので、小説やエッセイの言葉にだって、人が口に出したときの心地よさを求めてしまいがちだけれど……やはり本当に口に出して誰かに聞かせることを前提とした言葉や、それらで構成された作品は、小説やエッセイとは少し異なるリズムを有している気がする。
しかし今回の原作者である泉鏡花、この人は戯曲だけではなく小説も書くのだ。そう考えると、私も「やはり小説やエッセイと戯曲はノリが違って面白いなあ」などという場所で思考を止めている場合ではない。憚りながらも同じく言葉を使って作品をつくっている者として、きゅっと帯が引き締まるような心地になった。
今年は暦の関係で冬の連休が短い。とはいえ、年末のお休みの後には年始のお休みが控えている。2024年は今まで以上にたくさんのおはなしを書いてゆけるようにとの期待と願いでも込めて、ここらで短編のひとつふたつ、きゅきゅっと捻り出してやろうではないか。
台本の時はわからなくても舞台上のセリフを耳で聞いた時の心地よさ、ありますよねぇ。
返信削除演技も相まって決まるべきところにびしっと決まる言葉選びが。
短編楽しみにしてます!