おいおいすっかり

街が年末ムードだ。

先週末はともすれば永遠に布団から出られないところだったが、やまおり亭さんとこの招文堂に新刊を納めに行き、担当フェア開催中の店に顔を出してパネル設置を手伝いがてらお客さんに営業トークをかまし、テンション爆上がったお客さんに巻き込まれてなぜか一緒にぴょんぴょん跳ねることになった土曜、街に繰り出してお買い物をするのだと固い決意だけを胸に午後三時までだらだらと家のことをやったり昼寝したりして、ようやく出かけたら日は傾いてるわカフェはどこもいっぱいだわで結局春木屋でワンタン麺食べたりとか

でもまあこの「まあいいか」でズルズル過ごしている感じが、忙しさがいくらか落ち着いたことを示している。
ずっと張り詰めてた反動で本当に気が緩んじゃって、多少仕事に支障が出ている気がするけどちょっとくらいいいだろう。これが普通だ。

さて、吉祥寺は中道通りからちょっと曲がったところに「SOY BEAN FARM」という洒落たお味噌やさんがある。
各地の味噌を楽しめるランチもやっていてとても美味しい、が、私はもっぱらここで手に入る「加賀粒みそ」に夢中だ。

味噌汁、とくに豚汁を作るとちょっと汁気の多い煮物になってしまうので、甘い味噌を使うと味噌汁全体があまあまになってしまう。ので、辛口でしっかりした味の味噌がいいとリクエストしたところ、勧めてもらったのがこの「加賀粒みそ」だったのだ。

色が濃くて、全体的につぶつぶしている。と思ったら、豆のかたちがごろごろ残っているのだ。この豆がまたうまい。このみそで味噌汁を作るだけで、具が勝手にひとつ増えている。もちろん食べごたえ抜群である。

欲張りの味噌だ。

さて、ずっと買いに行けなくて切らしていたのでようやく昨日買いに行ったところ、いつもは厨房に立っているおじいさんが対応してくれた。私が脇目もふらずに「この粒みそください」と指差すと、大きなアイスクリームみたいな紙カップに500グラム山盛りしてくれて、おもむろに「牛タン食べられる?」と聞くのだ。
牛タン? もちろん、なんなら大好きですが。
にやりと笑った彼はやおら包丁を取り出すと、ほろほろしたお肉を細く切り始めた。手近にあった皿を引き寄せて、ぺろっと盛る。

「牛タンを赤ワインで煮て、ガーゼで包んで赤ワインとこの味噌で一日だけ漬け込むの」
つまんだお肉はよく味噌に漬かって、ちょっとお酒が欲しいほどだった。
「これは漬かりすぎなんだけど」
いやいやおいしいですよつまみにいいですねこれ。
聞くところによると、昔、金沢のご友人宅に行ったときに出されて色の濃さにびっくりした、それがこの粒みそなんだそうだ。石川県ではこのみそが当たり前。一般的なみその姿。なるほどなあ、この味の濃さは寒いところの味なんだなあ。

そんな話も聞かせてもらって、「また来ます(本気)」と言って店を出た。

吉祥寺の街はどこも人でいっぱい、かと思いきやちょっと脇によけてみると普段の暮らしのちょっといいものがそこここにある。
ちゃんと外を出歩いてよかったなあ、次はどこに行こうかとやる気が出たのが一番の収穫であった。

年末年末。むらくもやま会はもちろん、職場でも実家のほうでも旧友とも忘年会の話が出ている。うまいもの食べて、人に会って、また元気にほうぼうへ散っていきましょう。

コメント

  1. 張りつめたら緩むことも大事ですね。
    「SOY BEAN FARM」さん、草群さんに教えてもらって行ったときは秋田みそを買ったんだけど、大戸屋の定食の味噌汁を麦みそ汁に変更する贅沢を覚えてしまったから、今度は麦みそにしようかな~。

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  2. ナイスゆるゆる! つぶつぶのお味噌、わたしも大好きです。これからの時期、お味噌は七味を混ぜ込んでも美味しいんですよね……豚汁が食べたくなってきました。

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